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「総合診療科」を広告できる診療科目に加えることに賛成?【医師調査】

クリニックなど医療機関が専門分野を患者さんに伝える上で看板やホームページに掲載できる診療科目のことを「標榜科目」といいます。
厚生労働省によって、ルールが定められ、各医療機関はそれに則った運用が求められます。

厚生労働省が、特定の疾患や臓器に限定されない「総合診療医」の普及を促進するため、看板などに「総合診療科」と記載できるよう、医療機関の広告規制の緩和案を検討しています。高齢化が進む中、複数の健康問題を抱える患者さんが増加しており、地域医療の体制強化が喫緊の課題となっているいま、患者さんが必要な医療サービスをより早く見つけやすくなることを目指しています。

医師専用コミュニティサイト「MedPeer」でも、医師を対象に『「総合診療科」を広告可能な診療科目に加えることに賛成か』という質問が投げかけられました。

この取り組みは、地域医療の充実とともに、患者の利便性向上を図るための一環であり、今後の医療制度改革に向けた重要な一歩となるのでしょうか。


賛成派は約半数!

「賛成」「どちらかというと賛成」と回答した医師は、約半数という結果に対し、どちらかはっきりと断言できない「どちらでもない」の回答が約3割に。
賛成派は、患者さんの利便性や診療の一貫性を重視し、総合的な診療を広めることで医療の質の向上を期待しています。
一方、「どちらでもない」「どちらかというと反対」「反対」の医師は、診療の混乱や医療の専門性の低下を懸念し、より厳格な条件の下でのみ広告可能とするべきだという意見も。
それぞれの医師たちの意見をご紹介します。

調査日:2024年9月7日

「賛成」

60代 男性 勤務医 一般外科
医学は進歩するにつれて、診療知識や技能の幅や量は膨大なものに広がり蓄積してきています。各専門分野を身に着けるのは一朝一夕では無理であり年数がかかるのは必然です。
一方それぞれの分野を深め進歩する中で、逆にそれらをつなげる分野も並行して育成していくべきでしょう。
そういったそれぞれの診療分野を利用する上で、患者さん側もどう利用すればよいかを知って判断するには新たな概念での診療分野を標榜という形で広く知らしめることが必要でしょう。まだまだ新たな診療分野の独立(腫瘍内科、整形内科、再生外科など)は予想されるでしょう!

40代 男性 開業医 一般内科 代謝・内分泌科 その他
外来全身管理を担当する事を条件に、外来全身管理料のような算定を高得点で設定して、その責任の基、標榜可能にして欲しいです。そうすれば、全身診てもらいたい患者さんは、総合診療科に通院して、それぞれの専門科は現在のほぼ無償の外来全身管理の責務から開放され、それぞれの専門領域の診療に専念出来るようになれると思います。

70代以上 男性 開業医 一般内科 循環器内科 消化器内科 呼吸器内科 小児外科
今は診療科が細分化され、該当する専門分野以外のことは全く判らない医師が増えています。今後地域医療を担うであろう医師たちがこんな事では将来が心配です。勉強の為にも、そして専門分野にはまらない患者さんを診るためにも総合診療科は非常にありがたい診療科です。

70代以上 男性 勤務医 産業医 一般内科
政府の進める「かかりつけ医」は事実上「総合診療科」であり、現行の「内科」や「小児科」を標榜する開業医は実質上「総合診療科」を務めることがもとめられている。したがって大部分の開業医は現状にあわせて「総合診療科」を標榜するべきである。

60代 男性 勤務医 一般内科 消化器内科 循環器内科
長らく総合診療外来をやっていますが、色んな科に繋ぐ患者さんが多々来られます。とりあえずのファーストタッチ的存在と認識しています。何でもまずは対応するので、「総合診療科」が患者に誤解を与えるとは思いません。

50代 男性 勤務医 心療内科 精神科
総合診療科は、大学病院のイメージありますが、専門医を持ってたらいいんじゃないでしょうか、、、。ネットで総合診療科って科目、世間は分かっているのかが知りたい。セカンドオピニオンで来院されるかもしれない。

70代以上 男性 勤務医 一般外科 消化器内科 緩和医療 健診・予防医学
実際の日常診療で活躍している。我が病院では救急部に救急専門医が常駐することが他科兼務のためできないので、時間内には総合診療科が対応していて救急受け入れに貢献している。総合診療科は立派な診療科である。

30代 男性 勤務医 形成外科
反対する理由がない。多くの一般市民は体の不調があった際には”とりあえず内科”のお医者さんにかかるのが、総合診療科へシフトするのみでは?総合診療の先生方にとっても他クリニックと差別化を図れると思う。


「どちらかというと賛成」

40代 男性 勤務医 小児科
専門分野別に個別化されたクリニックも診療内容が明確でよいと思いますが、何科にかかった方がよいかがわからないケースもあるため。また大学病院でも総合内科講座がありそれなりの年数や症例で研鑽を積んだ場合に標榜することができるようにすればよいと思います。制限なしの標榜は医療の間口は広がりますが、医療の質はさがると思います。

60代 男性 勤務医 整形外科・スポーツ医学
まずは、総合診療科とは何かということを国民に啓発することが最優先と思うし、診療の質が我々の思っているニーズに達しているのかがいまいち不明。それらがクリアーできれば、標榜の意味はあり、患者のたらい回しがなくなり患者の立場としては受診しやすくなる。

60代 男性 開業医 一般内科 消化器内科
病院に総合診療科を標榜する科があると有難いです。症状が多臓器に渡る疾患の患者を紹介する際に振り分けをしてくれる科として機能する科が欲しいです。「総合診療科」というより、診断困難症例の紹介を受ける「総合診断科」として機能する科が理想です。

40代 女性 勤務医 一般内科
専門医を取得しているのであれば標榜可能にして良いと思います(標榜の要件に専門医取得を課すのは総合診療に限らずあらゆる診療科でそのようにして良いと思いますが)。高齢社会の中で、総合診療医の需要は高まっていると思います

40代 男性 勤務医 血液内科
ただ、ほかの科でもそうだが、専門医を持っている人が標榜できるようにできるという意味であれば賛成です。医師ならだれでも標榜できるというのはちょっと検索するときにも問題ですし、そこは改善すべきかとは思います。

40代 女性 勤務医 循環器内科 一般内科
総合病院の総合診療科は診断に迷う時など非常に助けていただいています。クリニックでも標榜してもらえると紹介もしやすいですが、しっかりと研鑽を積んでいるなどの一定のラインは作ってほしいとも思います。

60代 男性 開業医 一般外科 一般内科 整形外科・スポーツ医学
広告ということは自分の医院の看板にも出せるということでしょうか?でもちょっと考えてしまいけど。総合診療科としての大学での教育はいっさい受けていませんが、それでもいいんでしょうかね?


「どちらでもない」

50代 男性 勤務医 呼吸器内科 腫瘍内科 呼吸器外科 一般内科 総合診療
(本来の意味である内科的な)総合診療科としてでも、きちんと診療できるクリニックがどれほどあるか、微妙ですので、「誤解を与える」という意味でなくても問題あるようにも思います。(病院レベルでは、すでに総合診療科的な科の名前は使われているように感じます。)

60代 男性 勤務医 緩和医療
総合診療科として研鑽を積んできた医師にとっては、広告可能になることはよいことだと思います。ただ、総合診療科という言葉が内科・外科・小児科・皮膚科・眼科・産婦人科 etc. 全て「何でも診てもらえる」と誤解されると大変かなと思います。

40代 男性 勤務医 一般内科 循環器内科 その他 産業医
市中の総合病院で名乗るのは、どの診療科を受診して良いか分からない患者を割り振るのには適していますが、一般開業医の先生方は既に現時点でかかりつけ医として役割を果たしているので、今更使用する必要はないと思います。

50代 男性 勤務医 一般内科 健診・予防医学 呼吸器内科 老年内科
クリニックで総合診療科を掲げるのはどうかと思います。総合病院で受診すべき科の振り分けや救急外来の初療程度のレベルでは対応できますが、患者が期待する少しふみこんだ治療は難しいし、任せるべきではないと思います。

40代 女性 勤務医 耳鼻咽喉科
患者さんの誤解とは?
耳鼻咽喉科医ですが、なんかきついとの主訴で受診される方はすでにいますけど。戸惑いつつ、耳・鼻・のどの不調ではないのですかと優しくたずねます。もちろんめまいでもないのにです。

60代 男性 勤務医 一般内科 老年内科 家庭医療 循環器内科 総合診療
全ての診療科に同じですが、最低限標榜する場合の条件を明確にすべきである。賛否両論があるであろうが、少なくとも最低限度を保障する基準として、学会専門医は必要とすべきです。


「どちらかというと反対」

60代 男性 勤務医 一般内科 感染症科 膠原病科 腎臓内科・透析 総合診療
総合診療科といっても、現時点では色々な立場に医師がいます。家庭医、病院総合内科医、元々は専門科を病院勤務時代にはしていたのに開業してとりあえず何でも金儲けのために手を出している医師などです。現時点で『総合診療科』といっても、同床異夢です。そのため、患者さんを困惑させます。

40代 男性 勤務医 一般内科 総合診療 感染症科
現時点では、守備範囲や診療範囲がきわめて曖昧であり、混乱のものかと思います。
きちんとした総合診療のトレーニングを受けている医師と臓器別専門の勤務医から開業した医師では大きく診療内容の根本が違うと思いますが、患者側がそれをきちんと理解・実感できるかは疑問です。

30代 女性 勤務医 乳腺・内分泌外科
現時点でさえ形成外科と整形外科の区別がついていなかったり、「とりあえず内科」的な受診があったり、患者の認識は医療者が思っている以上に浅い。そこに「総合」なんて着いた標榜科が出てきたら、余計に混乱すると思います。

30代 男性 勤務医 代謝・内分泌科
総合診療科自体が明確に定義されていない。本当の意味で総合診療をやっている病院もあれば、感染症だけやっている総合診療もある。患者側からすればそれが分からない。

30代 女性 勤務医 一般内科
内科よりの科かなと思うので、一般内科でいいのではと思う。一般内科でも軽い皮膚科疾患などで受診する人も多いので、わざわざ総合診療とうたう意義がわからない。


「反対」

40代 男性 勤務医 整形外科・スポーツ医学 一般内科 総合診療
一般内科開業医はすでに総合診療医として働いております。今更改めて広告出す必要はあるのでしょうか?
内科とどう区別させるおつもりか方向性をまず示して欲しい。
そもそも各科が専門特化しすぎて「これはうちの科の病気じゃ無い」とかって患者の押し付け合いを防ぐ為に総合的に診る科を新設したのでは無いでしょうか?大きい病院には必要と思いますが、開業での標榜は内科との差別化できないなら不要です。

60代 男性 開業医 老年内科 循環器内科 代謝・内分泌科 総合診療 心療内科
特に大学病院や大規模病院においては、最初に臓器別の内科に振り分けられてしまうので、研修不能であり、何もできない医者が出来上がってしまいます。他科依頼するか検査しかできない総合診療科医を何人も知っています。しかし医者の少ない小規模病院、地域医療には必須です。この辺を厚労省はわかっていない。

50代 男性 勤務医 泌尿器科 腎臓内科・透析
総合診療科と聞いたイメージは各専門科で診断がつかないような疾患を扱うかプライマリーケアを扱う診療科です。プライマリーケアであればどの開業医もある程度扱うことが求められるし、病院の総合診療科と開業医の総合診療科は全く別物だと考えます。なので反対です。

50代 男性 開業医 一般内科 腎臓内科・透析 リウマチ科
総合診療科の大学教授ですら、私の専門領域の診療はとても専門的とは言えないレベルで、総合診療を行っていると言ってほしくない。今まで、総合診療ができていると言える総合診療科を診たこともない。

「総合診療科」は、多岐にわたる専門分野を網羅し、患者さんにとって便利な診療科目であると同時に、医師の中には、診療の質や医療の専門性に対する懸念点も残されているようです。
このような課題を克服するためにも、総合診療科の医師は、継続的な学びと情報更新だけでなく、チーム医療の活用や専門医との連携を通じて高い医療水準を保つことが必要とされるでしょう。

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