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救急車の有料化、医師の9割が「賛成」

救急車の出動件数は、2022年に前年比4.4%増の619万6,069件と増加傾向にあります。また、搬送人員も前年比3.7%増の549万3,658人と増えています。
(総務省「令和4年版 救急・救助の現況」の公表より)

救急車 有料化議論
総務省「令和4年版 救急・救助の現況」の公表

さらに、現場到着時間や病院収容時間についても伸びているため、こうした状況から、救急車の費用増加だけでなく、重傷者への対応遅れなどの課題を引き起こしています。

総務省「令和4年版 救急・救助の現況」の公表

三重県松阪市では、市内の3基幹病院に救急搬送された患者のうち、入院に至らなかった場合に保険適用外の「選定療養費」として1件(人)あたり7700円(税込)を徴収する対策を講じるなど、救急車の有料化を実施し、適正な利用を促す議論が行われています。

そこで、MedPeerの会員医師に、救急車の有料化への賛否やそれに対する意見を調査しました。


救急車の有料化に9割が賛成

例外を除き有料化すべき=入院や緊急処置など例外(主に重症)を除き有料化すべき


「一律に有料化すべき」「入院や緊急処置など例外(主に重症)を除き有料化すべき」が90%と、ほとんどの医師が救急車の有料化に賛成という結果に。
医師の意見をご紹介します。

「一律に有料化すべき」

40代 男性 開業医 一般内科 一般外科 総合診療 救急医療科
松坂市の様に入院に至らなかったら徴収といったものでは現在の問題は解決にならず、入院を希望する人が増える一方と考える。条件をつけるならもう少し細かく設定が必要と考えるが、判断に難渋するケースも増え病院側の混乱となるため、一律に有料化して、入院療養費のところから調整出来るのが望ましいのではないかと思う。ただ、そうなれば自治体単独で動くのは難しいですね。

40代 男性 勤務医 神経内科
入院や緊急処置を判断基準とすると、高齢者を介護している家族から入院を希望してもめる例が増えるように思われます。救急搬送をためらうことでの問題もありますが、救急車の利用マナーがひどくなっている事実もあります。有料化が良い方法かどうかの問題はあると思いますが、もしするのであれば一律の方が問題は少なくなると思います。

40代 男性 勤務医 血液内科
一律に有料化し、払わない方には救急が断ってもOKとかでもいいかと思う。救急外来受診料も別途病院側も請求し、救急車出動代に加えて救急外来受診料も追加で徴取し、それに追加して保険診療分の請求が望ましいと考えます。
ただ、生活保護の方に不正利用が多いのが悩ましい。


「入院や緊急処置など例外(主に重症)を除き有料化すべき」

60代 男性 勤務医 漢方医学 リウマチ科 整形外科・スポーツ医学 リハビリテーション科 麻酔科
1回の出動で公費を5万円必要とする救急車出動、救急車を呼ぶに値する疾患(医師が判断)を除き、有料化に賛成です。コンビニ受診や寂しさ紛れ受診、タクシー代わり受診など、救急車を呼ぶべきではない受診が多過ぎる。一方、救急搬送台数による診療報酬の加算(2000台/年)があるため、この目標を達成するため、搬送台数を増やしたいと電話で問い合わせがあった時に、わざわざ「救急車で来院してください」などと、救急搬送を促す医療機関があるのも事実。同時に、この加算も取りやめるべきである。

30代 男性 勤務医 リハビリテーション科 一般内科
受診すべき時に自分の症状がどの程度かわからなくて不安になる患者側の心理もわかるが、我々にとっては厄介ないわゆるリピーターもいる。
救急車を呼ぶことは決して悪ではなく、濫用が悪であるので、そこを間違えなければいいのでは。
骨折や、病状の悪化など、一度の受診では入院に至らないケースもあり、結果的に後から入院になった場合は選定療養費を返金するなどの対応も考えておいた方が良いだろう。

30代 男性 勤務医 循環器内科 一般内科
タクシー代わりの救急車が多いから適正化すべき。入院した場合に個室しか空きがないと伝えるといいですって言う救急要請者がいる時点でそこまでの必要性がないと自覚してる患者が相当数いるため、検討するべきだと思う。
アルコール中毒で倒れてて、横になってた人が救急車呼ばれた場合もその人の自己責任として支払いが生じても仕方ないと思う。


「有料化すべきではない」

60代 男性 勤務医 神経内科
選定療養費をとるかとらないかの線引きが難しい。そのため搬送された医療機関でのトラブルを引き起こす可能性があると思います。一律有料化した場合には,交通事故などで第三者が救急要請した場合には誰が負担するのかでまたトラブルになると思います。

20代以下 女性 勤務医 神経内科
一般人に重症かそうでないかの判断は難しく、有料であることで呼ぶことを躊躇し、亡くなることはあってはならないと思います。ただ、不必要なのに救急車を呼ぶ事例が昨今増えていることを考えると、有料化は一種の抑止力となると考えられ、悩ましいところです。

救急車を必要としない状況での呼び出しを減らすことは、真に救急医療が必要な患者さんへの迅速な対応に直結するともいえます。
一方で、重症かどうかの明確な線引きや、別の方が要請した場合などの線引きが必要などの意見も。
限られた資源の中でサステナブルな救急医療を提供するためには、医師や医療関係者の意見を取り入れ、実情に即した対応策を講じるべきかもしれません。

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