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救急車の有料化、医師が考える適正価格は?

三重県松阪市で導入された救急車の有料化にあたり、2024年2月に行った『救急車の有料化について』の調査では、約9割の医師が「有料化に賛成」という結果になりました。
そこで今回は、救急車が一律で有料化するならば、どのくらいの金額であれば妥当かについて、医療の最前線に立つ医師の皆さんに聞いてみました。


回答は分散する結果に、最も多い回答は「9,001円以上(26.1%)」

最も多かった回答が「9,001円以上」(26.1%)、「3,001〜5,000円」(25.8%)「5,001〜7,000円」(22.4%)が2割超となり上位となりました。
医師のコメントを見てみると、救急車を不必要に使うことの抑制と、救急車の適切な利用を確保するための料金設定が背景にあるようです。
それぞれの選択肢のコメントを見ていきましょう。

調査日:2024年04月21日

「~1,000円」

40代 男性 勤務医 老年内科
救急車の不適切利用を防止する目的としては完全に無料でなければ良いと考える。逆に、救急車を必要なときに確実に活用してもらえるようにするためには安価であるべきである。個人的には10~100円程度で良いと考える。

70代以上 男性 勤務医 一般内科 循環器内科
必要無いのにタクシー代わりに利用するのを抑制するため。高すぎると本当に必要な人が犠牲になる可能性があるのでここの位が良い。

「1,001~3,000円」

20代以下 男性 勤務医 麻酔科
タクシー代わりに利用する方の軽率な行動の抑止力になると思います。
実際の診療内容に基づいて、減額や返還などもあると必要な人に資源が行き渡ると考えています。

60代 男性 勤務医 循環器内科 一般内科
現在は救急車が無料なので、気楽に利用する人がいる。有料化には賛成だが、高額すぎると払えない人も出てくる。1000円から3000円程度が妥当と考える。

「3,001〜5,000円」

60代 男性 勤務医 総合診療 一般外科 呼吸器外科 救急医療科
コンビニ的利用を防ぐためにはある程度の金額が必要であり,現状では自由診療となる季節性インフルエンザの接種に関する費用が3000円から5000円の機関が多く,弁護士への相談費用が30分5000円が相場などの事例を勘案すると5000円が妥当と考えます。

50代 男性 勤務医 一般内科 漢方医学 総合診療 小児科 整形外科・スポーツ医学
ランチで払える額を超えれば、コンビニ的に救急車を使う回数は減るでしょう。本当に命にかかわる危険を感じる方は、大半の方はその程度の額を払ってでも救命を求めて119に電話をすると思います。救急要請に対して、何かの足かせは必要です。

60代 女性 勤務医 産婦人科
必要な患者には援助が顧慮されるべきでしょう。ちなみに合衆国では(90年代)ERにかかっただけで100ドル超えと聞いていましたし、医療は高くて貧民は利用が制限されているものでした。そこへ向かってはいけないとは思います

「5,001~7,000円」

40代 女性 勤務医 循環器内科 一般内科
1万円でも良いと思いましたが、5000円くらいでも十分抑制にはなると思います。救急要請が必要であったと判断されれば保険会社から補助が出るようにすれば良いのではないでしょうか。

70代以上 男性 開業医 一般内科 産業医 その他
「金さえ払えば救急車を呼んでもいいのだ」と思い込んでします人を抑制することが必要です。最低でも5000円。でも1万円を超えると本当に必要な人が救急車をよぶことを躊躇してしまう怖れがある。難しいところです。

30代 女性 勤務医 麻酔科
5000円以上が妥当かと思います。タクシー代わりに使う人の抑止力になり、なおかつ緊急時には払ってもよいと思えるラインがよいと考えますので、今試行スタートする都市の値段で動向を見て、最終決定が必要です。

40代 男性 勤務医 一般内科 循環器内科 その他 産業医
タクシーよりは高額にしておかないと、安易な利用はなくならないと思います。ただ、本当に必要な重症患者などの利用を抑制しかねないので、一律での有料化には反対です。

「9,001円以上」

40代 男性 開業医 眼科
十分高い方がよい。何ならもっと高額でもよい。本当に必要な方のみの利用に絞るべき。明らかにウォークインで構わないのに安易に救急車を利用しすぎ。高くなればそれに合わせた生命保険商品なども出てくるはずで、それほど患者サイドも不利益は被らないようになっていくと考えられる。

50代 男性 勤務医 麻酔科
公的な救急車の場合、8万円〜15万円の基本的な料金がかかり、さらに走行距離や、酸素の使用などによって追加料金が加算されていくシステムです。 民間の救急車の場合は3万円ほどで、消防局の救急車よりは安いですが、緊急走行ができないなどの違いがあります。

30代 男性 勤務医 泌尿器科
燃料代および救急隊の人件費を担保できる額だと5万円以上になるかと。
ただし妥当な救急要請であれば引き続き無料にする、という条件で。判定は複数医師およびコメディカルが判断する必要あり手間はかかると思います。

40代 女性 勤務医 放射線腫瘍科 放射線科
有料化する場合は、タクシー代以上の値段を設定するべきです。一律1万円ぐらいでも安いと思います。ただし、緊急性がある状態と判定された場合(明確なガイドラインが必要ですが)、割り引きが適応されるべきだと思います。

60代 女性 勤務医 精神科 放射線科
現実的に、経費として5万円以上かかっているので、5万円で良いのでは?
現状の医療費が安すぎ、それが当たり前になり、患者さんの一部の暴言、理不尽な要求、医療職を見下すなどの増大の一因となっている思われます。

「有料化に懐疑的である」

60代 男性 開業医 一般内科
一律の有料化は如何なものかと考えます。しかしとんでもない理由で利用する人がいるのも事実なので、一旦徴収して、結果的に入院するしないにかかわらず正当な利用ならば返金する、といった方法が良いのかなと考えます。実現は難しいとは思いますが。

60代 男性 開業医 一般内科
交通事故で目撃者や警察が救急要請した場合の負担はどうするか?など例外的な項目が多く、有料か無料かを判断するのが搬送先の医療機関となるとその負担が大きすぎると思います.有料か無料かの線引きをまず考えていただきたいと思います。

30代 女性 勤務医 精神科
あまり高すぎると利用すべき患者が尻込みする原因にもなりかねませんが、悩みます。有料化することで「お金払えば救急車使っていいよね」になりかねませんし。

おわりに

それぞれ妥当と考える金額は分散する形になりましたが、多くの医師は「必要な人は躊躇なく救急車を呼べるように」という想いがあることがわかりました。
その上で、「タクシー代わり」に使う人を抑制するためにも、一定の費用が必要であるとの見解が多い一方で、救急車の使用が本当に必要な状況での利用を妨げないようなバランスの取れたアプローチであることも重要。
また、費用負担については、生活保護受給者や低所得者に対する配慮が必要であるという意見も。

限られた資源の中で、サステナブルな医療を提供するためにも、救急車利用の適正化は急務となっています。
必要な場合には迅速かつ適切な医療サービスが提供されるようにするためにも、何かしらの対策を講じる必要がありそうです。

>>>【救急車の有料化、医師の9割が「賛成」】の記事を読む

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