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【メドピア×マイクロソフト】医療業界における生成AIの活用とその未来

2024年4月の働き方改革スタートを見据え、医療分野で生成AIを活用し、業務効率化が急務となっています。
そうした中、日本マイクロソフトの大山訓弘さんとメドピア創業者の石見陽さんが生成AIが医療業界にもたらす可能性と課題について対談を行いました。


医療業界は、生成AIの導入によって大きな変革の波を迎えています。
日本の医師33万人のうち約半数が登録している「MedPeer」を通じて行われた調査では、会員である医師の中で、業務で生成AIを『利用したことがある』または『利用してみたい(未利用)』と回答した方が約6割に上るという結果が出ました。

医師に生成AI活用について調査


プロフィール

日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 ヘルスケア統括本部長
大山 訓弘

日本マイクロソフト 大山さん

日本マイクロソフト株式会社にて、ヘルスケア業界に対する全般的な事業活動についての責務を担う。
AIや複合現実・各種クラウドテクノロジー等を含むマイクロソフトの製品/サービス全般を日本の医療現場や医療行政、製薬企業における経営改革、働き方改革に対する提案活動に従事している。また医療情報に関連する学会・団体を通じた提言活動も行っている。2018年にマイクロソフトに入社する前はSAPジャパンにおいて各種マネジメントを歴任し企業の経営改革支援に従事。医療AIプラットフォーム技術研究組合 (HAIP)理事、一般社団法人PHR普及推進協議会理事等も兼務。香川大学経済学部卒業。

メドピア株式会社 代表取締役社長 CEO (医師・医学博士)
石見 陽

メドピアCEO 石見さん

1999年に信州大学医学部を卒業し、東京女子医科大学病院循環器内科学に入局。 研究テーマは血管再生医学。医師として勤務する傍ら、2004年12月に会社を設立し、代表取締役社長に就任。2007年8月に医師専用コミュニティサイトを開設。日本の医師の約半数が参加する医師集合知プラットフォーム「MedPeer」へと成長させる。現在もヘルステック、医療の最前線に立つ、現役医師兼経営者。


医療業界における生成AIの革新的な役割

石見|医師としての実務で生成AIを利用した割合が6%という少ない結果でしたが、業務サポートの面では非常に役立つと思います。医師はとにかく書類が多いこともあり、自動でカルテを読み込んで、紹介状を作ってくれるような生成AIがあれば、医師の負担が軽減されるでしょうね。

大山|生成AIは優秀ですが、人間がやっていた医療を完全に代替することはまだ難しいと思います。文章生成などのコアではない業務をサポートすることで、医師や看護師など医療スタッフの負担を軽減できると考えています。

石見|生成AIを取り入れるには、セキュリティに関する議論のような課題はありますが、生成AIが、医師と患者さんとのコミュニケーションを円滑にするサポートになる可能性がある点には期待を寄せています。

大山|ChatGPTはOpenAI社が開発したものですが、当社とは数年前から投資と技術的な連携、さらに戦略的なパートナーシップも結んでいます。
生成AIを人間のサポートをする”副操縦士”と位置づけ、マイクロソフトの製品に組み込んでいくことを目指しています。
2023年11月にMicrosoft 365に生成AIが組み込まれました。生成AIに指示をすることで、WordのドキュメントをPowerPointのスライドに変換することができたり、提案されたスライドが意図しているものと違っていた場合、より具体的な指示をすることで別の提案をしてくれたり、日常の業務の手助けをできるような身近な存在として生成AIを位置付けていきたいと思っています。

医師の方には学会の資料作成などに活用していただきたいですね。

石見|それは革命的ですね!!


生成AIで実現する業務効率化と論文検索

石見| 集合知で医療を再発明するというビジョンを掲げている会社として、我々は会社の中の集合知を集めて、どのようなことができるのかを考えています。
生成AIを活用してプロダクトを開発して届けたり、社内の業務効率化に使えるのではないかと実験をしています。
社内プロジェクトを公募したところ、質の高い70件以上の応募がありました。現在、部署を超えてアイデアを出し合ってプロダクト開発をしています。

その中でも、2つの主要なプロジェクトがあります。
1つは業務効率化のプロジェクトで、管理栄養士が作る文章のチェック業務を生成AIに任せることで、年間約500時間の作業時間を削減できました。
もう1つのプロジェクトとして、2023年12月に「AI論文検索」サービスをリリースしました。MedPeer会員向けに論文検索を効率化するもので、生成AIがキーワードを組み合わせて論文を検索し、ユーザーに最適な結果を提供します。

大山|今の生成AIはこれまでと違い、言語の精度が高いという特徴があります。
論文レベルのものでも適切に要約できます。
英語が苦手な方も、ITの力で言語バリアを取り除く可能性があると思います。

石見|特に医学の分野では、最先端の情報を取るためには英語の論文を理解することが必要です。言語バリアを取り除くことで、より効率的に取得できるようになりますね。


生成AIを活用した日本マイクロソフトの取り組み

大山|世界のヘルステック分野は米国がリードしている部分もあります。
そこで当社は、米国の電子カルテの分野で大きなシェアを持っているEpic社と戦略的な提携を発表しました。
医療従事者や医師向けに文章作成や患者さんとのコミュニケーションを補完できるような生成AI機能や、音声をデータ化するプロダクトを共同開発しています。
一方で、文化的なことも要因かもしれませんが、生成AIに対する抵抗感というのが、欧米諸国よりも日本の方が少ないのではないでしょうか。

石見|文化の差という点は興味深いですね。先日、米国のヘルステックのイベントに参加しましたが、同じ印象を持ちました。

大山|社会やビジネスの中に生成AIを取り入れるということに対しては、日本はスピード感を持ってできるのではないかと思っています。ITの分野で日本はやや遅れがちですが、生成AIに関してはフロントに行ける可能性があると感じています。
また、医療データを活用するためには、特に高度なセキュリティと規制が必要です。医療データの利用は国内のガイドラインや規制に従い、安全性とセキュリティを確保しながら信頼性の高い生成を実現し、安心して利用できる環境を構築することが必要ですね。

石見|国内も海外もセキュリティの問題というのは大きいですね。具体的に日本マイクロソフト社ではどんな開発をしているのでしょうか?

大山|マイクロソフトのテクノロジーを使いながら、インターネットに出ていない機微な情報を活用し、紹介状の自動作成をしたり、診療記録のサマリーを作成するなどの検証をしています。

石見|電子化が進んでいくと、医師はもちろん看護師も業務が急激に軽減されます。テクノロジーの進展が病院のDXを加速させる。そうなると、病院経営のIT投資に関する判断にも大きな影響を与えそうですね。

大山|そうですね。電子カルテや医療情報システムに生成AIの機能が搭載されていて、意識しなくても日常業務の中で生成AIの機能を使っている。日頃の仕事を自然に生成AIが支援をしているという世界の実現に向けて取り組んでいます。


医療業界における生成AIの未来と可能性

石見|医療業界における生成AIのメリットの第一は、業務効率化ではないでしょうか。2024年は医師の働き方改革も予定されており、業務効率化の必要性がますます高まります。
将来的には、言語だけでなく画像を含むテクノロジーの進化により、診療技術がAIによって強化され、診療行為自体が変わる可能性があると考えています。

大山|医療従事者がパソコンやスマホに向き合う時間を減らし、その時間を患者さんと向き合う時間にすることが理想です。
例えば、問診で患者さんとの話が終わるころには、電子カルテが自動ででき上がっている。そんな世界を目指して開発をしています。
もちろん、最終的な診断は医師が行いますが、その他のプロセスはコンピューターによって処理できると考えています。
医療分野での画像解析も生成AIが進歩している領域です。既に専門の機器が存在し、多くの医師が利用しています。ChatGPTに医療用画像を渡すと、画像を認識はしますが、「専門知識がなければ診断はできません」という倫理観を持った回答を生成AIが出します。
一般的に生成AIが職を奪うのではないかという話をよく聞きますが、医療分野では多くの職種が残ると考えています。医療は根本的に人が人にする行為なので、コンピューターにとって変われない分野です。医師の皆さんには、生成AIを道具として活用しながら、患者さんと向き合う時間に費やしてほしいですね。

石見|現在のテクノロジーの進化、特に生成AIの進歩は、医療分野において非常に重要です。画像解析や今回の生成AIに関する話などもありますが、最終的に医療は人と人との直接的な接触=手当てで終わります。オンライン診療もそうですが、結局は生身の人間同士での対話やサービス提供が重要です。
生成AIの進化は、我々の仕事の質を高めることに寄与します。しかし、セキュリティと個人情報の保護は絶対に守らなければならないもので、最終的な責任の所在は重要です。

私たちメドピアは「Supporting Doctors, Helping Patients.」というMissionを掲げています。医師を支援するプロダクトを作るために、この生成AIをテクノロジーとして活用することを引き続き検討したいと思っています。

>>>この対談を動画で見る

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