医療の社会課題解決を目指すヘルステックグローバルカンファレンス「Healthtech/SUM」受賞企業インタビュー
メドピアと日本経済新聞社が共同で開催する日本最大級のヘルステックグローバルカンファレンス「Healthtech/SUM」。世界的に医療・ヘルスケア領域のデジタル化が進む中、日本におけるヘルステックの成長を促進するため、国内外におけるヘルステックの最先端の知見が集まり、イノベーションを発信しています。
「Healthtech/SUM」のメインイベントであるピッチコンテストの前年度の受賞企業に、「Healthtech/SUM」の魅力とこれからの展望を語っていただきました。
2022年 最優秀賞 受賞
視聴者参加型オーディエンス賞 受賞
株式会社WizWe 代表取締役 CEO
森谷 幸平
2022年 ライフサイエンス賞 受賞
アンビスホールディングス賞 受賞
株式会社N Labo代表取締役
北村 由香
Healthtech/SUM主催 インタビュアー
メドピア株式会社代表取締役社長 CEO (医師・医学博士)
石見 陽
前年度受賞者に聞く!ヘルステックの最前線
石見:日本で「Healthtech/SUM」を開催するきっかけとなったのは、サンフランシスコで行われたHealthtech/SUMに参加して、大きな衝撃を受けたことにあります。
多くの挑戦が失敗に終わるかもしれませんが、翌年には新たな挑戦をし、再びイベントに参加します。政府も大企業も、そのような挑戦を支援します。
このような場で、私たちのようなベンチャーやスタートアップが切磋琢磨し、連携を深めることができる場。これが日本にはまったくないと感じ、同様のコミュニティを日本で作りたいと思い、「Healthtech/SUM」の前身となる「Health 2.0 japan」という小さなイベントからスタートしました。そして、日本経済新聞社との共催となり、「Healthtech/SUM」と名前を変え、今に至ります。
さまざまなサービスが提供されることで世界がどう変わっていくのか、先端の情報を共有することは重要です。しかし、私たちが望むのは、多種多様なチャレンジャーが集まり、「Healthtech/SUM」を通じて人的ネットワークや事業のシナジーが生まれる場を作ることです。ですので、ピッチコンテストは最も重要な部分であり、「Healthtech/SUM」の新しい熱量を感じる象徴的な場となっています。
そんなピッチコンテストの厳しい審査を勝ち抜いた昨年度の受賞者が、WizWeとN Laboです。
WizWe 森谷さん(以下森谷):WizWeは、教育事業から派生した会社で、私はMBOによってこの事業を買収し、設立しました。当初からの主要事業は語学のe-ラーニングでしたが、ユーザーの継続率の低さから売却の危機に瀕していました。そこで、ユーザーの行動が定着する仕組みを構築し、人を中心とした習慣定着の取り組みを始めました。そして、事業が軌道に乗った際に売却を検討していたので、私はこの事業を継ぐ形でMBOを行いました。
その後、自動化の領域を拡大し、「Smart Habit」というプラットフォームを構築しました。このプラットフォームの特徴は、1人のサポーターが最大で3000人をサポートできることです。最初は教育分野での取り組みでしたが、社会全体の課題解決に貢献できると考え、ヘルスケア分野にシフトしました。日本では「2040年問題」として知られる、65歳以上の人口が全人口の38%を占め、医療介護費が100兆円を超える問題に対応すべく、未病予防活動を開始しました。
初めての取り組みは、JRグループのフィットネスクラブ「ジェクサー」との取り組みでした。さらに、2022年1月には、サントリーが資本参加し、私たちは睡眠や血糖に関連した習慣定着についての研究を深めています。
私たちの提供するサービスは、習慣化プラットフォームで、直接エンドユーザーに提供するのではなく、OEM形式で他の事業者をサポートしています。事業者の名前で提供されるサービスになっています。
石見:現在は、教育よりもヘルスケア領域の方が割合が多くなっているのでしょうか?
森谷:教育事業も大切にしています。大手の教育事業者の事例ですが、月次のユーザーチャーンを20%改善するなどの実績もあります。
私自身は完全にヘルスケア領域に移行しておりますが、教育事業は取締役が引き続き担当するという2カンパニー制をとっています。
石見:私たちの目標は、未病・予防の取り組みを通じて、社会全体の健康の向上に寄与することです。ユーザーの離脱率を下げられるというのは、非常に有効ですね。また、医療の領域では、予防から治療の段階において、製薬会社などにおけるアドヒアランス(治療計画の遵守)の観点からも、有用性が高いと思います。
森谷:まさに、ピッチの成果を受けて、薬局や製薬会社といった業界からも関心を集めています。アドヒアランスを進めていく具体案を今年中の実装を目指しています。
石見:日経新聞でも、毎回、ピッチコンテストは大きく取り上げていただいています。次に、N Laboの北村社長から事業の概要についてご説明をいただきたいと思います。
N Labo 北村さん(以下北村):「N Labo」の”N”は、「長崎」のNです。私たちは長崎大学情報病理学の大学発ベンチャー企業です。私自身、もともとは外科医であり、大学教員も務めていました。「病理診断」という、患者さんの病気を最終的に判断するプロセスには、多くの課題があることに気づき、2017年に設立しました。
その背景には、私が長年にわたって研究してきた「病理AI」の研究論文が出版されたことがあります。現在、「デジタルパスオロジー」の推進と病理AIを活用できるような研究開発に焦点をシフトしています。
「デジタルパスオロジー」とは、ガラススライドをデジタル化し、わかりやすいモニターなどで見て診断することなどです。実は、日本の病理学分野は大幅に遅れていて、95%の病理医が今でもガラススライドを顕微鏡を通して見ているのが現状で、デジタル化はわずか5%に過ぎません。放射線分野において20年も遅れてしまっています。
石見:海外では、病理学のデジタル化は進展しているのでしょうか?
北村:コロナ禍でかなり進みました。日本は依然として遅れを取っています。すでに2020年4月には、FDA(アメリカ食品医薬品局)が病理医はリモートでの診断を推進する指針を出していますが、日本では類似の指針は出されていません。
石見:日本では病理医が不足しているという認識がありますが、デジタル化はこの領域では絶対に必要でしょうね?
北村:絶対に必要だと思います!東京には多くの病理医が集まっていますが、地方ではその数が極端に少なく、デジタル化が必須となっています。
私たちは、デジタルパソオロジーとAIを駆使して、病理診断の支援をしています。最終診断は病理医が下すものであり、AIが診断するわけではありませんが、病理医が少ない中で、迅速で正確な診断を支援するために、デジタル技術の推進が不可欠です。これにより、手術中の迅速な診断や地方との連携もスムーズに行えます。
「Healthtech/SUM」で広がるネットワーク
石見:先ほど「Healthtech/SUM」についてお話させていただきましたが、ピッチコンテストでの受賞後、具体的な進展や嬉しいニュースなどはありましたか?
森谷:この半年で保険会社や損保会社、検診を行う会社など、新たな領域のお客様が急速に増えてきました。ピッチコンテストで可能性を見い出してくださったようです。薬局や製薬会社との具体的な案件も生まれ、売上につながった企業もあります。また、7月には明治安田生命から資本参加をいただくことができました。この機会も、ピッチコンテストが始まりであり、大きな影響を与えたと思います。またテレビ東京の番組で約3分間特集されたのも、コンテストでの優勝があったからだと思います。
石見:主催者側として本当に嬉しいですね!
北村:私たちのプロダクトが完成してからあまり時間が経っていないため、全国レベルのピッチ大会への参加は昨年の12月が初めてで、かなり緊張しました。ダブル受賞をを契機に、特に東京近辺のピッチコンテストや人々とつながり、東京でのコミュニティを広げることができました。
また、今回帝国ニュースに掲載してもらったことで、多くの方が私たちの活動に注目してくださったことに気づきました。実際、患者さんから直接、会社に問い合わせの電話がありました。これには非常に驚き、そして感謝しています。
石見:私たちが開催するピッチコンテストはヘルステックに特化していますが、一般的なピッチコンテストは、事業提携や販路開拓のきっかけにもなります。また、人材獲得にも影響します。ただ目立つことがゴールではありませんが、スタートアップにとっては仲間を増やすことが非常に重要ですね。
森谷:私たちの場合、新卒採用では一昨年は苦戦しましたが、次の年には状況が改善しました。これはピッチコンテストでの成功が大きく影響したと感じています。中途採用においても、オファー受託率が向上しています。
北村:人材獲得においては、具体的な実績はまだ出ていませんが、九州をはじめ多くの方々に私たちの活動を見ていただけたので、どんな人材が必要かなど、多くのお声がけや紹介をいただくようになりました。まだ具体的な雇用にはつながっていませんが、ピッチコンテストに出たことで多くの方に知ってもらえたことは大変大きな成果でした。
石見:大学ベンチャーが増えてきていますが、長崎大学ではこれが初めてのことですか?
北村:長崎大学には以前ベンチャー認証制度がなかったので、公式に大学ベンチャーと認定されることはできませんでしたが、2022年10月に新たに数社のベンチャーが誕生し、私たちもその中で公式に認定を受けることができました。
「Healthtech/SUM」の舞台裏を公開!
石見:ピッチコンテスト出場にあたり苦労したことや、苦労したからこその成果などはありますか?
森谷:ヘルスケア系のピッチコンテストでのファイナルは初めてだったので、大変な緊張の中、最初のプレゼンテーションを行いました。そこでのアドバイスを受け、本番までに多くの改善とアップデートを行い、ぎりぎりの仕上げで挑むこととなりました。準備は困難でしたが、それによって得られた価値は非常に大きかったと感じています。
石見:実際にプレゼンテーション時間はかなり短く、5分くらいですよね。審査員からの質問はどうでしたか?
森谷:鋭い質問がたくさんありました。笑
準備はしていましたが、いろんな角度から質問がきましたね。
木村:一番最後のプレゼンだったんです。それまでに皆さんのプレゼンを聞いてどんどん緊張が高まり、言いたいことの半分も言えなかった気がします。
医師としての講義や学会の発表を行うことがありますが、ピッチコンテストというとまた違うスキルが求められます。たくさん練習をしても、何が正解か試行錯誤の連続でした。
石見:プレゼンテーションにおいては、時間を厳守することや話し方の技術だけでなく、「ハートの部分」やライブ感を感じられる瞬間は、非常に魅力的で、ピッチコンテストの醍醐味ともいえます。評価する側も大変かもしれませんが、この部分は重要です。
また、ピッチコンテストが終わった後、ネットワーキングの部分も大変重要です。ピッチに出た後、ネットワーキングにつながたことはありますか?
森谷:登壇者の方々と協業しております。また、懇親会で名刺交換をした方々とは、「WizWe総研」というシンクタンクにおいて、客員研究員としてご協力いただくことになる見込みです。特に懇親会は、これらの貴重なネットワークを築くための場となりました。
北村:東京近辺の方々とネットワークが広がったので、現在次の資金調達を計画しているのですが、このネットワーキングによって、資金調達の際のアドバイスをもらえる方たちと繋がることができました。
石見:講師控え室も盛り上がりますね。一般参加の方々はなかなか入れないので、登壇者の方々とのネットワーキングは貴重な機会です。このような機会を通じて、それぞれの価値を感じ取っていただけたら嬉しいですね。
2023年12月11日・12日「Healthtech/SUM2023」開催決定!
今年もハイブリッド形式での開催を予定しており、オンライン参加も可能です。
最優秀賞100万円のスタートアップピッチコンテストのエントリーもスタートしました!
過去開催されたピッチコンテストをきっかけに、人脈が拡がることで、他の参加企業や大手企業との業務提携や資金調達を実現したり、テレビや新聞の取材が入るなど、「Healthtech/SUM」が成長を加速させる契機となっています。
昨年最優秀賞を受賞した株式会社WizWeとの対談記事が公開されました
【2022年の受賞企業インタビュー配信中】
動画URL:https://youtu.be/56auxZ9KgbA
「Healthtech/SUⅯ」に参加し、受賞するまでの軌跡。イベントを通じて、得られたものは何だったのか?そして、1年経過した今、事業はどのように成長したのか?ここだけの舞台裏トークが聞けます。
本イベントが、多くの皆様のご縁をつなげ、ヘルステック業界の成長の更なるきっかけになりますように。
それでは、会場でお会いしましょう!
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