医療機関での脱ハンコの実態を調査
2020年には行政手続きにおける押印が原則廃止され、業務効率化や環境保全のための「脱ハンコ」が進んでいます。
医療機関においては、入院、検査、手術などの際に患者さんから同意書を取得することが求められますが、法律上、同意書への押印は必須ではありません。
そんな中、医師専用コミュニティサイト「MedPeer」にて『同意書に「押印」をしてもらっていますか』という質問が投げかけられました。
医師の皆さんがどのくらい同意書に押印をしてもらっているかどうかを検証します。
「押印をしてもらっている」と答えた医師は12.4%にとどまる
調査結果から、同意書に押印を求める文化が残る一方で、署名のみで対応する医療機関も増えてきていることがわかりました。
押印の有無は医療現場の慣習や医師の個々の考え方に大きく影響されるているようです。
それぞれの意見に対する医師の意見をご紹介します。
「押印してもらっていない」
40代 女性 勤務医 精神科 神経内科 一般内科 小児科 リハビリテーション科
署名だけでも運用しているが、看護師や事務が医師のみとめていない診断書/計画書を発行してしまったり、ワクチン問診表でワクチンを打ってしまったりすることが続いたので、自分は自分が携帯しているハンコを捺すようにしている。
40代 女性 勤務医 一般内科 リハビリテーション科
署名のみです。蛇足ですが、診療情報提供書に押印したがる看護師さんがいて(宛先ミスなどを考慮しダブルチェックのため絶対看護師に渡さねばならない)、ハンコないですと言うととても不機嫌なられて怖いです…。
60代 男性 開業医 一般内科 血液内科 健診・予防医学
極論を言えば、民法上は口頭の同意でも契約は有効となるはずで、そもそも文書すら不要となる。言った言わないの防止のための文書にしかすぎないので、自筆署名さえあれば押印不要と考えている。
50代 男性 勤務医 神経内科 一般内科 リハビリテーション科
現在勤務している病院だけでなく、ここ10年以上はどこの病院でも押印してもらっていません。こちら側も署名だけで済ませています。日本特有の文化であり、時代にそぐわないのではと思います。
40代 女性 勤務医 神経内科
以前はハンコが必要だったが緊急などでハンコを持っていない人もいて、そういう時に拇印を押させることにとても抵抗があったので、今は自筆署名だけで良くなり良かったと思っている。
70代以上 男性 勤務医 膠原病科 リウマチ科 アレルギー科
自署すればよいだろう。死亡診断書でさえ自署すればよいだけのものを、どうして法的には死亡診断書より下位にある同意書に署名押印を求めるのか。自署すれば十分。
「押印してもらっている」
60代 男性 勤務医 消化器内科
総合病院ではありますが押印をはじめ古い慣習が全く改善されません。診断書作成や検査の同意書ですらいまだに医師が時間をかけてとっている状況です。医師事務はいるのですが体質はかわりません。
40代 女性 勤務医 一般内科
いまだに同意書には印鑑を押してもらっています。持ち合わせていない人もたくさんいるので、後日押印したものを持参してもらうか、署名で代用することもあります。
50代 男性 勤務医 一般内科 総合診療 救急医療科 消化器内科 心療内科
法的には必須ではありませんが、やはり押印することで患者さんや家族も同意したことをはっきりと認識してくれますので有用です。
50代 男性 勤務医 整形外科・スポーツ医学 その他
サインでOKの病院のあったが、いまいるところは、いまだに押印の文化が残存している。押印なんか、いくらでも偽造できるのに。
50代 女性 勤務医 一般内科
同意書への押印が必須でないことを現場スタッフは知っているが、用紙が新しくならないため、いまだに押印をしてもらっている。
30代 男性 勤務医 放射線科
押印はもらわないこともありますが、本人もしくは代理人のフルネームの署名はほぼ必ずいただいています。
「同意書を取得する機会がない」
70代以上 男性 勤務医 放射線科
現在は同意書をとる機会がないが、以前は自筆のサインでも可としていました。印鑑はいつでも持っているわけではなく、シャチハタなどどこでも手に入る印鑑は形式的と思います。
70代以上 男性 勤務医 一般内科 小児科
コロナ以降は事務手続きの簡素化のため印鑑のいる同意書は発行していません。行政手続きでさえも印鑑不要の時代、本人のサインだけてはもらうようにしています。
60代 男性 勤務医 病理
病理医なので自分が取る機会はありませんが,剖検の承諾書は今でもご遺族の署名と捺印が必要です。
50代 女性 勤務医 精神科
今の職場では同意書を取ることがほとんどありません。以前の職場では自署してもらっていました。
60代 女性 開業医 小児科 アレルギー科
法律上同意書への押印は必須でなければ、無駄を省くという点で押印は不要なんでしょう。
60代 男性 開業医 心療内科
自筆のサインでよいと思うが、後で見ても自分のサインか確信が持てない時もある。
押印の必要性や形式については、より効率的で現代的な対応が求められているようです。
患者さんにとっても医療スタッフにとっても最適な方法を模索しながら、より良い医療環境の実現に向けて取り組んでいくことが重要です。
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