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現役臨床医が解説 救急車有料化は賛成?反対?妥当な金額は?MedPeer会員医師に調査

救急車をタクシー代わりに利用するなど救急車の不適切利用が社会問題になっています。
緊急性のない患者さんが救急車をタクシー代わりに利用することで、すぐに現場に急行できる救急車がなくなってしまい、心筋梗塞など1分1秒が命に関わる患者さんの搬送が遅れてしまうことがあるのです。

こうした問題を解決するために、救急車の利用を有料化したら良いのではないかという意見が出てきています。

そこで、医師専用コミュニティサイト「MedPeer」で「救急車が有料化された場合の妥当な金額」についてアンケートが行われました。今回はそのアンケート結果についてご紹介いたします。


救急車有料化の金額について医師2500名にアンケート実施

2024年4月21日に2,500名のMedPeer会員医師を対象に「仮に救急車が一律で有料化するとなった場合に、皆さまはどのくらいの金額であれば妥当と考えますか?」といったアンケートが行われました。

結果は、 9,001円以上が最も多く26.1%を占めました。次に多かったのは3,001~5,000円で25.8%でした。次いで、5,001~7,000円が22.4%となりました。さらに、1,001~3,000円 (11.4%)、7,001~9,000円 (6.3%)、有料化に懐疑的である (4.5%)、~1,000円 (3.6%)と続きました。

このように、救急車利用料を5,000円以上にすべきという意見が74.3%という結果でした。一方で、有料化に懐疑的であるという意見はわずか4.5%であり、95.5%の医師が救急車有料化に賛成という結果となりました。

救急車有料化・賛成派の意見まとめ


9,001円以上
有料化する場合は、タクシー代以上の値段を設定するべきです。一律1万円ぐらいでも安いと思います。ただし、緊急性がある状態と判定された場合(明確なガイドラインが必要ですが)、割り引きが適応されるべきだと思います。
勤務医 放射線腫瘍科 放射線科

3,001~5,000円
ランチで払える額を超えれば、コンビニ的に救急車を使う回数は減るでしょう。本当に命にかかわる危険を感じる方は、大半の方はその程度の額を払ってでも救命を求めて119に電話をすると思います。救急要請に対して、何かの足かせは必要です。
勤務医 一般内科 漢方医学 総合診療 小児科 整形外科・スポーツ医学

~1,000円
救急車の不適切利用を防止する目的としては完全に無料でなければ良いと考える。逆に、救急車を必要なときに確実に活用してもらえるようにするためには安価であるべきである。個人的には10~100円程度で良いと考える。
勤務医 老年内科


救急車有料化に賛成の方の多くは、少ない金額でも自己負担が増えることで無駄な受診は減ると考えている方が多かったです。
「少ない金額でも自己負担がゼロでなければ、無駄な救急車の利用は減る」という考えから、「タクシーで来院する場合よりも高額であるべき」など意見はさまざまでした。

救急車有料化・反対派の意見まとめ


有料化に懐疑的である
交通事故で目撃者や警察が救急要請した場合の負担はどうするか?など例外的な項目が多く、有料か無料かを判断するのが搬送先の医療機関となると、その負担が大きすぎると思います。有料か無料かの線引きをまず考えていただきたいと思います。
勤務医 神経内科

有料化に懐疑的である
安いと結局タクシーがわりに使う人は減らず、高いと本当に救急要請が必要な人が尻込みして救命できない場合が出て、いずれにしても問題解決には至りません。
開業医 一般内科 循環器内科 小児科

有料化に懐疑的である
有料化されれば、救急車での搬送がお金を払ったことに対する代償となり、かえって救急要請が増えることになることは間違いない。
勤務医 脳神経外科


救急車有料化に反対の方は、有料化するとしても有料か無料かを判断する負担が増えることや、本当に救急車が必要な方が要請を控えることで救命できない命が出てくるのではないかといった意見がありました。

また、有料化されることでお金を払えば使っていいと解釈して、かえて利用が増えるのではないかという意見もあり、有料化には解決すべき問題が山積みだなと思われました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
やはり医療現場で働く医師たちは救急車の不適切利用に問題意識を感じている方が多いようです。

私も医療現場で救急車の不適切利用を何度も見てきた経験から、救急車の有料化には賛成です。
少額でも有料化することで、タクシー代わりの利用やコンビニ受診などの無駄な受診が減ることが期待できます。医療現場における医師の負担を軽くすることができますし、医療費の抑制にもつながることでしょう。

実際に救急車が有料化される自治体も出てきています。
三重県松阪市では、救急車の出動件数が上がり続けており、半数以上が軽傷者であったことから、2024年6月1日午前8時半から救急車が有料化されることになりました。
救急車の利用により必ず料金をとられるわけではなく、松阪地区の基幹病院に指定されている3病院に救急搬送されたものの、入院には至らなかった際に「選定療養費」として7700円(税込)が請求されるものです。

参考)ついに救急車が「有料」に!? 入院不要だと「7700円」請求される? 三重県 松阪市が「適切な利用」を呼びかける理由を解説

このような試みがうまくいけば全国に拡大していく可能性があると思います。将来的にはあなたが住む地域でも救急車有料化が実現するかもしれませんね。

解析・文:スバル@精神科医(Twitter: @subaruseisin

編集部注)本記事は一般社団法人正しい医療知識を広める会の協力で執筆いただきました。

一般社団法人正しい医療知識を広める会
正しい医療知識を広めるという理念のもと、質の高い専門知を発信する専門家を増やすためのプラットフォームとしてアザラシライティング塾を運営中。医学生から教授まで、200人以上の多種多様な背景を持つ医師が在籍。


>>>【救急車の有料化、医師の9割が「賛成」】の記事を読む

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