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医療DXを推進するヘルスケアスタートアップ起業家が語る!~ヘルステック業界の未来<前編>~

現在、私たちが生きる社会はデジタル化や高齢化の進展により、急速に変化しています。特に、ヘルスケア業界においては、保険証の廃止とマイナンバーカードの導入、個人の健康情報を管理するパーソナルヘルスレコード(PHR)の活用など大きな変化が控えているため、医療の質を担保しながら効率化を図るためには、デジタルトランスフォーメーション(DX)が必須となります。

今回は、ヘルスケアの未来を切り拓く2人のリーダー、株式会社ヘンリー 代表取締役社長 逆瀬川光人さんとDFree株式会社 代表取締役 中西敦士さんをお招きし、へルステック業界におけるスタートアップ企業としてのビジョンと取り組み、そしてヘルステック業界の未来について、メドピア株式会社代表取締役社長 CEO・石見陽さんが深掘りします。

(写真左より)メドピア株式会社代表取締役社長 CEO・石見陽さん、株式会社ヘンリー 代表取締役社長・逆瀬川光人さん、DFree株式会社 代表取締役社長・中西敦士さん

日本におけるヘルスケアスタートアップの現状

石見:ヘルスケアにおけるスタートアップの創業数は、厚生労働省の資料によると、2020年をピークに減少しています。一方、特定の企業において調達額は増えているということもあり、2極化が進んでいると考えられます。

また、MedPeerの医師会員を対象に「将来起業することに興味があるか」について調査をしたところ、約1/3が起業に興味があるという結果となりました。
これについて、逆瀬川さん、中西さんにお話を伺っていきます。

MedPeer医師会員に調査

逆瀬川: 医師が起業する際、臨床現場の知識を活かしてDXを考えるケースが多いと感じています。私たち外部から参入する者にとって、現場の感覚はかなり重要です。そのため、必ず現場に足を運び、実際の運用を考えたり、場合によっては業務に直接携わったりすることが多いです。
こうした臨床を覚えるフローを省いて起業できるという意味では、DXを進める上で大きなアドバンテージになると考えています。
起業に関心が高いこんなに医師が多いのは、明るいお話だなと感じています。

中西:率直に言って、起業に対する関心が非常に高まっていると感じています。起業というキャリアパスが一つの選択肢として、確立されつつあるのではないでしょうか。
一方で、実際に起業している医師はまだ2%にとどまっているという点は気になるところです。私たちから見ると、医師免許という非常に安定したカードを手にしているわけですから、起業に挑戦しない理由はないのではないかと思います。興味のある方には、ぜひその一歩を踏み出していただきたいですね。

日本初のレセプトコンピューター一体型クラウド電子カルテ「Henry」

石見:ヘルスケアのスタートアップの代表であるお二人の事業について伺いましょう。まず、株式会社ヘンリーの事業についてご紹介をお願いします。

株式会社ヘンリー 逆瀬川さん

逆瀬川:約15年間、楽天やWantedlyで、新規事業の立ち上げをしてきました。そして、医療とテクノロジーを融合させるために、株式会社ヘンリーを起業しました。

現在、ヘンリーでは中小病院をターゲットにした電子カルテとレセプト会計システムを開発しています。設立から約6年が経ち、現在は70名ほどの社員を擁し、シリーズBで累計9億円を調達しています。大学時代の同級生や多くのスタートアップの経験者が集まっているのが特徴です。また、70名のうち約40名がエンジニアで強力なプロダクトチームがあることも、我々の大きな強みです。

ヘンリーでは、特に中小病院に対して、日本の保険診療に基づく診療報酬制度に従い、しっかりとした臨床運用と会計を実現するための電子カルテとレセプトコンピューターを提供しています。1,700ページにも及ぶ診療報酬ルールなど、保険制度の難しさへの課題を正面から扱うサービスです。

我々の目指すところは、国の制度と医療現場の間に生じるギャップを埋め、医療制度や医療需要の変化に柔軟に対応できる病院運営を支えるシステムを構築することです。
2040年には医療費が68兆円に増加すると言われています。特に地方では労働人口の減少に伴い病院が維持できなくなる課題があります。そのため、医療の大幅な効率化を図ることが我々の使命です。

診療報酬制度のルールは非常に複雑で、多くの分岐が存在します。そのため、医療の現場では診療報酬制度の複雑化に対応し、正確にカバーするための仕組みが求められています。
20年以上の歴史を持つレセプトコンピューターを扱うプレイヤーが新たに出てこない中、我々がデジタルにシフトできる唯一の企業になることが重要です。

「Henry」とは?

我々が提供しているクラウド型電子カルテ「Henry」では、音声入力やiPadの機能を活用し、新しいテクノロジーを取り入れています。4年をかけて電子カルテを開発し、主要な機能はすでに満たされていますが、毎週新しい機能を追加しています。
また、クラウド型はインターネットにさらされるため、強化されたセキュリティ対策を施しており、より安全性を高めています。
実際、2023年には200床以下の病院への新規導入のうち、弊社の導入数が約1/4に達するなど、確かな実績を上げています。他の大手メーカーが高額で管理が煩雑なオンプレミス型システムを提供する中、ヘンリーはコスト面や高齢者が使いやすいシステムといった既存のサービスのペインの解決を目指しています。

中小病院に適切な価格でサービスを提供し、周辺領域も広げていく予定です。最終的には、モバイル対応やナースコールなど、医療機関がしっかりと業務効率化を図れる世界を作りたいと思っています。

中西:逆瀬川さんが、医療の分野に転身されたきっかけを教えていただけますか?

逆瀬川:元々大学時代から社会貢献に興味を持っていました。楽天やWantedlyではプラットフォームビジネスに携わり、社会的に価値のあることに挑戦したいと思っていました。ヘルスケアを選んだのは、医療の現場に実際に役立つサービスを提供したいと思ったからです。予想以上に難しい面もありますが、やりがいを感じています。

尿ケアを支える「DFree」の可能性

石見:続いて、DFree株式会社の事業についてご紹介をお願いします。

DFree株式会社 中西さん

中西:私たちが取り組んでいるのは、高齢者にとっての深刻な悩みを解決するための新たなソリューションです。97%の方が大人になっておむつを履きたくない、他人からの世話を受けたくないと感じています。

しかし、60歳を超えると、78%の方が頻尿や尿漏れといった悩みを抱えており、中には「急に尿意を感じてトイレに間に合わないかもしれない」といった心配から外出できない方もいます。人生100年時代と言われる中、60歳以降の40年間、こうした悩みと共に過ごすこととなります。
現在の解決策としては手術や薬がありますが、紙おむつや尿取りパッドが非常に多く使われています。2015年には日本全体のゴミの約4%が使用済みの紙おむつ・尿取りパッドであり、2030年にはその割合が7%に達するとの予測もあります。おむつや尿取りパッドの原料はほとんどがプラスチックで、リサイクルが難しいため、環境への影響も懸念されます。日本は成人1人あたりのおむつ使用量が世界平均の3倍であり、明らかにおむつ大量消費国家です。

これらの悩みを解決するのが、私たちのデバイス「DFree」(ディフリー)です。このデバイスは超音波センサーを搭載しており、お腹に貼ることで膀胱の膨らみをモニタリングします。膀胱が一定の大きさになった時に、「そろそろトイレですよ」とスマートデバイスに通知するシンプルなソリューションです。

このデータを自動的に取得することで、排尿傾向を把握でき、介護施設や医療機関でのケアに役立てられています
実際、介護施設でのトイレでの排尿率が52.8%向上し、尿取りパッドの使用量も大幅に減少しました。また、排尿ケアにかかる時間も31%削減され、患者さんや介護施設の入居者さんのQOLが向上しています。

こうした成果は政府の後押しもあり、2022年4月からは特定福祉用具の対象商品として認められ、障害の領域でも日常生活用具給付等事業の対象となっています。
2023年から2024年かけては約2倍の成長を遂げており、2026年までには10倍の普及を目指して事業を成長させています。

「バイタルテクノロジーを通じてLIVE YOUR LIFEを実現し、世界を一歩進めること」を目指しています。私たちの取り組みは、高齢者やその家族にとって新たな希望になれたら嬉しいですね。

逆瀬川:事業化して継続することが難しい領域だと感じましたが、中西さんは、どのようにしてその市場を見極めたのか、また実際どのように事業を拡大しているのでしょうか?

中西:きっかけは、私が留学中に体験した出来事ことでした。そこでクラウドファウンディングをしたところ、実際に介護現場で多くの人々が抱える課題に気づき、それを解決するためのプロダクトを開発することにしました。

石見:介護における排泄のところの人材不足について、DXがもたらす社会的価値は大きいと思います。

(後編へ続く)

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