ペニシリンの歴史、分類について徹底解説|「抗菌薬」セミナー
医師専用コミュニティサイト「MedPeer」内の「MedPeer 研修医チャンネル」にて聖路加国際病院元チーフレジデントでベストティーチャー賞を受賞した松尾先生が「抗菌薬」について徹底解説!
今回は「ペニシリン」についての解説動画を基に記事にて内容をご紹介します。
「MedPeer 研修医チャンネル」では松尾先生に解説いただいた動画をすべて掲載していますので、ぜひご覧ください!
※医師限定:動画の視聴には会員登録が必要です。
はじめに
新型コロナウイルスによるパンデミックが発生したことは記憶に新しいですが、今後どのような新興感染症が現れるかは未知数です。
そうした中で、人類の歴史を振り返ると、ペニシリンの発見が非常に大きな役割を果たしてきました。ペニシリンの歴史、分類、特徴を学び、医療現場での対応に備えていきましょう。
今回のセミナーでは、以下の知識を得ることを目標としていますので、ぜひ参考にしてください。
1.ペニシリンの歴史がわかる
2.ペニシリン系の分類がわかる
3.ペニシリン系のそれぞれの特徴がわかる
4.実際の処方例を学ぶ
ペニシリンの歴史
ペニシリンの発見者はイギリスのセントメアリー病院で多くの負傷兵を診察していたアレクサンダー・フレミングです。
1928年、フレミングが休暇から病院に戻った際、ペトリ皿の周囲にアオカビ(ペニシリウム属)が生えており、そのカビの周辺では細菌が増殖していないことを発見しました。
しかしそこから、ペニシリンを実用化するまでには時間がかかり、1940年に、チェーンとフローリーという科学者がペニシリンを分離し、実用化に導きました。その功績から、1945年、フレミング、チェーン、フローリーの3人はノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
ペニシリンの分類
これが今回の最大のメッセージです。
ペニシリンの分類について、以下の天然ペニシリンから始まるペニシリンの系譜を書けるようになることは基本です。
系譜の始まりから、それぞれについて説明していきます。
天然ペニシリン
最初に実用化された天然ペニシリンは「ペニシリンG」と呼ばれ、黄色ブドウ球菌に対する効果があるとされていました。そのため、ペニシリンGは負傷兵の外傷による皮膚感染症の治療に広く使用されていましたが、時間が経つにつれて細菌は進化し、ペニシリンGに対して耐性を持つようになりました。
これはペニシリンGが効かなくなった最初の事例であり、黄色ブドウ球菌がペニシリナーゼを産生するようになったことが原因です。
ペニシリナーゼ耐性ペニシリン
ペニシリンGに対する耐性を持つ細菌に対抗するために開発されたのが「メチシリン」「クロキサシリン」です。
ただし、様々な理由から現在販売中止となっていますが、ペニシリンを学ぶ上で黄色ブドウ球菌用のペニシリンは大事になってきます。
アミノペニシリン
アミノペニシリンは、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌に効果的なペニシリンのスペクトラムで、グラム陰性菌にも有効です。
このグループには一般名で言うとアンピシリンとアモキシシリンが含まれており、これらは主に内服薬として使用されます。
抗緑膿菌用ペニシリン
入院患者が院内で医療関連感染、例えば肺炎や尿路感染症を起こすことがあります。これらの感染症には緑膿菌が関与していることが多くあります。そこで開発されたのが「ピペラシリン」です。
βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン
前述のアミノペニシリンやピペラシリンはβラクタマーゼという酵素を持つ細菌には対抗できないため、これらの薬にβラクタマーゼ阻害薬を配合した新しいペニシリンが開発されました。
例えば、アンピシリンにはスルバクタムが、アモキシリンにはクラブラン酸が、ピペラシリンにはタゾバクタムが配合されています。これらはβラクタマーゼ阻害薬を含むペニシリンとして知られており、より広範な細菌に対する効果を持っています。
βラクタマーゼを産生する菌
グラム陽性菌では黄色ブドウ球菌
グラム陰性菌では腸内細菌など
嫌気性菌ではBacteroides fragillis
将来の耐性を予防するうえで、処方薬が必要かどうかも見極められるようになるため、分類や経路を覚えていることはとても大事です。
ペニシリンの分類まとめ
基本的にペニシリンはGPC(グラム陽性球菌(gram positive coccus))をターゲットにした抗菌薬
ペニシリンが臨床で非常に重要な抗菌薬であり続ける理由:体内のほとんどの組織への移行性あり
時間依存性
腎排泄
半減期が短い
ペニシリンの移行性の悪い組織 ①前立腺 ②目 ③炎症のない髄液
それそれの特徴や処方例ついて、MedPeer研修医チャンネルのセミナー動画で詳しく紹介しています。
>>>忙しい日常臨床の隙間時間に1分間で学べる!「1-min 感染症コンサルト」でさらに抗菌薬について学ぶ
※医師限定:視聴には会員登録が必要です
講師プロフィール
聖路加国際病院/メイヨークリニック感染症科
松尾 貴公先生
2011年長崎大学卒業後、聖路加国際病院入職。2014年チーフレジデント、2021年よりテキサス大学ヒューストン校/MDアンダーソンがんセンターに臨床フェローとして留学、2022年よりチーフフェロー。2024年7月からはミネソタ州メイヨークリニックにて整形外科領域の感染症フェローシップを開始。2012年ベストレジデント賞、2013-2020年ベストティーチャー賞受賞。著書に「レジデントのためのビジネススキル・マナー: 医師として成功の一歩を踏み出す仕事術55」「あの研修医はすごい!と思わせる症例プレゼン」「チーフレジデント直伝!デキる指導になる70の方法」「ピンチの研修医」など。
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