【熱中症対策】夏場のスポーツ、大会開催について医師の見解は?
2024年も昨年同様暑い夏に
2023年の平均気温は1898年の統計開始以降、最も高くなりました。※
また、年間の猛暑日(35℃以上)の日数が過去最多となった地点も多くあります。
そのような中、熱中症の救急搬送者数も2008年の調査開始以降2番目に多く、前年(2022年)比で20,438人増の91,467人となりました。
さらに、ウェザーニュースが発表した予報によると、2024年の夏(7月~9月)も観測史上最も暑くなった昨年に匹敵する暑さとなる可能性があり、熱中症の救急搬送が増加した昨年同様、注意が必要と言えます。
夏場のスポーツ、各大会の暑さへの対策は?
例年、夏には、全国高等学校総合体育大会(高校総体・インターハイ)や全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)など多数のスポーツ大会が開催されます。
そのため、年々暑さが増している中で、各競技において、熱中症への対策も行われています。
【スポーツ大会の熱中症対策例】
・日本高校野球連盟は、2024年の夏の全国高校野球で試合を午前と夕方に分けて行う2部制を開幕から3日間導入。
・インターハイの男女サッカーは暑さ対策として、2024年から、男子は福島県で固定開催、女子は2024~25年については北海道で開催されます。
日本スポーツ協会では、熱中症指針を公開
公益財団法人日本スポーツ協会では「熱中症予防運動指針」を公開しています。
これは、熱中症予防の温度指標をWBGT(Wet-Bulb Globe Temperature)を基に、それぞれの指標に応じた対処法を示したものです。
日本スポーツ協会の指標で、WBGTが31℃を超えると「運動は原則中止」とあるように、高温化での運動には熱中症のリスクがあります。
そこで、医師専用コミュニティサイト「MedPeer」の会員医師に「夏場のスポーツ大会の開催について」調査を行いました。
医師が考える熱中症対策「開催基準を設けて開催するべき」46.0%
「熱中症対策の観点で、夏場のスポーツ大会の開催はどのようにすべきか」という調査に対して、「開催基準を設けるべき」という回答が46.0%と最多となりました。一方で、「夏場は開催すべきでない」も42.0%と多くの医師が夏場の開催に懸念を示す結果となりました。
それぞれの意見を見ていきましょう。
個々人の熱中症対策に加え、熱中症警戒アラートや気温を指標に開催基準を設けるべき
50代 男性 勤務医 耳鼻咽喉科
本来であれば夏場の屋外のスポーツ大会は控えた方が良いとは思いますが、今までの慣習や伝統などからスケジューリングの変更は難しいことが多いかと思います。そもそも夏以外には適さないスポーツもありますし。
現状では開催時間を早朝や夕方・夜間にしたり、可能であれば屋内競技場での開催を検討したり、気象条件によっては延期したりなどの対応がベストではないですが妥当なのではないでしょうか。
30代 男性 勤務医 精神科 心療内科 在宅医療 美容・アンチエイジング
流石に今のまま放置はダメだと思います。甲子園などの学生が参加するスポーツ大会の場合、その成績が今後の進路や人生に影響を及ぼしかねないため、選手個人や選手家族だけの努力ではどうにもできないと思います。
そう言った犠牲を防ぐためにも何らかの基準は必要かと。
かと言って一律に夏場の開催を禁じるというのも軋轢が生じそうなのでそれも違うかと思います。
60代 男性 勤務医 代謝・内分泌科 消化器内科 腎臓内科・透析 循環器内科 膠原病科
夏場は暑いが運動するには天候がよく、子供たちが夏休みということもあり、家族で一緒にスポーツ大会に参加する機会を設けることには賛成です。しかし、地球温暖化現象による猛暑続きで熱中症対策をしっかりと行う必要があります。救護班を作り、参加・応援する人たちは涼しい場所、衣服、水分補給などを前もって準備することを徹底すべきです。
20代以下 男性 勤務医 その他
私自身バスケをしているが、あまりにも暑いとパフォーマンスは低下してしまい選手にとっても満足いく大会にはならないと感じる。個人の対策だけではどうにもならない点が多く、主催側が開催時間や室内であれば空調の利用などを徹底することが必要だと思う。
50代 男性 勤務医 麻酔科 漢方医学 産業医 整形外科・スポーツ医学
大会を楽しみにしていたり、大会に向けて努力してきている人もいるので、無闇な線引きで中止にしたりするのは良くない。やはり個人個人の対策が一番重要であり、次に大会のできるようなセッティングを検討して、万が一にも備えておくのがいいと思う。
夏場は開催すべきでない
50代 女性 勤務医 消化器外科 一般内科 一般外科 乳腺・内分泌外科
指標を設けて実施しようとしても、ほぼ毎日、該当して順延という事態になりかねません。日程がずれると、遠征費がかさみますし、生徒達の体調管理なども大変だと思います。屋外の競技に関しては、夏場は避けるべきではないでしょうか。
60代 男性 開業医 一般内科 血液内科 健診・予防医学
もう以前とは気候が同じではない。アスリートへの判断としてはWBGTなどの指標があるが、スタッフや観客を考慮するともう少し辛めの判断が求められ、もはや夏の開催は冷涼な地域(国内にあるのか?)以外はやめた方がよさそう。
60代 男性 開業医 整形外科・スポーツ医学 リハビリテーション科 リウマチ科 一般外科
熱中症による死亡者数はH8年と比べると10倍くらいになっている。スポーツはどうしても我慢を強いられる状況になる場面が多く、自分から休む事を言い出せないと思われる。
夏季は開催すべきではない時代になっている。
50代 女性 勤務医 その他 小児科 家庭医療
こう毎日熱中症警戒アラートが発令されるなら、夏の屋外のスポーツはやめるべきだと思います。大会があればそれに伴い練習もあります。大会だけでなく練習もリスクがあると思います。
30代 女性 勤務医 一般内科
いくら基準を設けたとしても、近年の夏の暑さは厳しく屋外での激しい運動は非常に危険であり、時期をずらす方がベストだと考えるため。
参加者個々人に熱中症対策を徹底させた上であれば、特に開催基準は設けなくてもよい
60代 女性 勤務医 耳鼻咽喉科
体調の自己管理を含めての試合だと考えるべきだと思っているので。
60代 女性 勤務医 腎臓内科・透析 一般内科
基準があるとそれはそれでまたもめる原因になる
大会に向けて努力を行ってきた選手に対して、一定の理解はするものの、近年の猛暑の中でのスポーツ大会の実施については、対策が必要あるいは開催すべきではないと考える医師が多いようです。
努力してきた選手に対しての配慮は必要ではあるものの、夏場のスポーツ大会は安全な運営が求められています。
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