医療従事者とイラストレーターのコラボレーションの機会を…メディカルイラストレーターの新たな試み
メドピアグループは2024年4~7月にかけて、1つの拠点に集結できるようオフィスを増床。オフィス増床をきっかけに、グループの共有エリアである
「コミュニケーションスペース」に続く廊下の壁に、「Medical Illustration Gallery」を新設しました。
メディカルイラストレーションとは、身体内外の描写や絵による手術記録など、わかりやすいイラストで伝えにくい情報を可視化、表現したものです。
そのイラストを、誰でも見られるよう、メドピアのオフィスがある8階廊下にギャラリーとして展示しているのが「Medical Illustration Gallery」です。
本日は、「Medical Illustration Gallery」の立役者、メドピアのグループ会社である株式会社コルボの宮内 俊郎さんにギャラリー開設までの経緯や、メディカルイラストレーションへの想いなどを伺いました。
株式会社コルボ
製薬企業や医療機器メーカー、医療施設を対象に展開するヘルスケア専門のセールスプロモーション会社。
製品カタログ・医療従事者向け冊子の制作をはじめ、シンポジウムやセミナー、展示会で使用するブースのデザインから設営まで行っています。また、医療従事者や医療機器メーカーによる治療方法の説明動画や製薬企業がプロモーションで使用する動画、スライドおよびWEB制作などを行う。専門知と洗練されたデザインでクライアント企業の広報・PR戦略のサポートを行う。
プロフィール(宮内 俊郎さん)
1980年、デザイン専門学校を卒業後、デザイン会社に就職。フリーのグラフィックデザイナーを経て再度企業に就職する。1995年阪神淡路大震災をきっかけに株式会社コルボに入社し、5年間営業として勤務した後、制作部に異動。徐々にメディカルイラストレーションに携わるようになる。
2016年、日本メディカルイラストレーション学会発足と同時に入会。第二期役員・副会長を務めた後、現在アドバイザーとして学会活動をサポートしている。
ー現在のお仕事について教えてください
コルボには営業として入社したこともあり、クライアントとの折衝から制作ディレクション、進行管理を経験しました。制作部に異動後はグラフィックデザイン部に所属し、デザインはじめコピーライティングにも従事しました。近年はメディカルイラストレーターとして、専門的なイラストを描くことがメインです。
0からのスタート。積み重ねてきた医療の知識
ーもともと医療の知識は持っていたのでしょうか?
よく学会でも、学生から「どうやったらメディカルイラストレーターになれますか」「初めから医療の知識はあったのですか」と聞かれることがありますが、お恥ずかしい話、医療の知識はありませんでした。専門用語など、わからないことは一つひとつ調べていました。
きっかけとしては、医療機器メーカーの方が、医師に私を紹介くださる機会が増えてきた頃です。学会発表のために使う資料のイラストを描ける人を探しているとのことで、ご紹介いただき、イラスト制作に取り組むことになりました。
しかし、その内容は最先端の研究結果ということもあり、理解するのは容易ではありませんでした。
そのような中、分からないながらも、汗をかきながら、調べ調べ手探りでイラストを描き上げました。
ーそこから、どのようにして日本メディカルイラストレーション学会への参加につながるのでしょうか?
昔は、たとえば肋骨の数が違ったり、変な骨格だったりで、間違ったメディカルイラストレーションも多かったですね。現代でも細部を見ると、あれ、これおかしいのでは?と感じる絵も多く見かけます。 医療の絵なので、間違った絵で伝わってしまうと、最悪患者さんが被害を被ることもないとは言えません。そこで、メディカルイラストとして正確に描くことは、世の中に多少なりとも貢献できるのではないかと考えました。
医療関連で本で調べると、イラストは載っているものの、それがメディカルイラストレーションというひとつの価値のあるものだという認識はまだ世の中にはありません。
医療分野に特化したライターの育成を主に行う、日本メディカルライター協会は存在していますが、過去メディカルイラストレーションをテーマとして扱うことはありませんでした。そんな中、メディカルライター協会がイラストについて講義をやるという話を聞き、その講習会に参加しました。
その後、岡山の川崎医科大学関係者の方々をはじめ、メディカルイラストに情熱を持つ有志が集まり、日本メディカルイラストレーション学会が発足し、2016年12月に第1回学術集会が開催されたのを機に私も入会しました。
ーなぜ「Medical Illustration Gallery」を作ろうと思ったのですか?
日本メディカルイラストレーション学会の学術集会は、学会発足当初はリアル開催だったのですが、私が第二期役員に就任した直後のCovid-19の流行で、オンライン会議を数年間は余儀なくされました。そしてようやく今年(2024年)の3月に、久しぶりにハイブリッドで学術集会を開催することができました。私はリアルで参加したのですが、お会いした皆さんが活発に意見交換をされていて、皆さんのメディカルイラストに対する熱い想いを肌で感じました。そこで、銀座松竹スクエアへの移転を機に、もし展示できるスペースがあるのなら、メディカルイラストをまとめて見ることができるスペースを作ることができたらいいなと考えました。日本にはまだそういう場所がないですからね。
一方、メドピア社長の石見さんと弊社代表の内堀もグループ社員が医療を身近に感じられる環境づくりができないものかと相談されていたということもあり、ギャラリー新設のご提案後、話がとんとん拍子に進みました。
ギャラリー開設にGoサインが出ましたが、そこに展示する絵を集めなければなりません。日本メディカルイラストレーション学会の歴代の役員で比較的交流の深い方々から順に「日本にまとめてメディカルイラストを見れる場所を作りたいんです。イラストを提供していただけませんか」とお一人おひとりにラブレターを書きました。
すると、皆さんとても好意的に受け止めてくださり、早い方ではその日のうちにイラストを送ってくださいました。当学会の歴代会長の方々も皆さん大変喜んでくださったのにはとても勇気をもらいました。
オフィス移転後1週間ぐらいでギャラリーにイラストを設置したのですが、イラストを提供してくださった先生のおひとりが「今、東京に来ているからちょっと見に行っていいか」とお電話をくださり、とても熱心に見ていかれたのは嬉しかったです。
実際にギャラリーにイラストが飾られるまでの工程を見せていただきました!
―「新しい作品をそろそろ展示しなくちゃいけないなと思って、持ってきました。」と、新しい絵をインタビュー時に持ってきてくださいました。
イラストをプリンターで出力して、その紙の裏側に水をつけます。水につけると紙が少し伸びるので、その水分が飛んでしまわないようにおおよそ10分以内に木製パネルに貼り付けます。これは水張りという手法です。紙を木製パネルに固定するためにホッチキスで止めて、製本用のテープで囲います。
展示方法については最初、ピクチャーレールにワイヤーを使ってかけるようにすればよいかな、と考えたのですが、工事が必要になるので、壁に跡が残らないマジックテープを利用し、絵を固定することにしました。
マジックテープは貼って剥がせ、自由度が高く、レイアウトも変更しやすいこともあり、この方法に落ち着きました。
ー展示をする上で苦労したことはありましたか?
送っていただいたイラストの縦横比がさまざまであったり、描かれた内容もテイストも先生によって異なります。それぞれのイラストをどのくらいの大きさに出力するか、どの人のイラストをどの位置に配置するかなど、いろいろと悩みましたね。
医療従事者とイラストレーターのコラボレーションの場に
ー今後の展望を教えてください
外科医は手術が終わった後、翌朝には患者さんを診る看護師さんや若手医師を集めて、カンファレンスを開きます。そこで、描いたイラストをシェアしてどんな手術をしたのかや、術後ケアの上で気をつけなければならないポイントなどをチームメンバーとシェアする必要があります。その為には手術の内容をパッと見て分かるイラストがとても有用です。
また、働き方改革が施行されたこともあり、 医師は制限された勤務時間のなかで、正しく速く描いて伝えなければなりません。そういう労働環境の変化もあり、外科医がイラストを描くスキルの重要性は高まってきているようです。
そのような背景もあり、医師のメディカルイラスト技術習得の必要性は以前にも増して高まってきているのだと考えます。
イラストの良いところは、写真のように目に映る要素だけではなく、例えばその臓器の裏にはこういう血管や神経が走っているとか、こういうテンションで臓器が引っ張られているなど、周辺情報を可視化できるところです。 余計なものを省いて、伝えたいポイントをクローズアップして描けるのがイラストの良いところだと思います。
絵だから表現できること、伝えられることがありますので、絵の活用がもっともっと医療の中で広まればいいですね。
「Medical Illustration Gallery」については、どんどん絵を補充していきたいので、 まだ声をかけてない人にも順次声をかけてみようと思っています。
そして、今後学術集会が東京で行われる際には、学会員の方々をこのギャラリーにお誘いしたいです。
メドピアでコミュニケーションを図りたい医師がいらっしゃれば、マッチングの機会も設けられればと。
さらに、医療従事者とイラストレーターのコミュニケーションの機会やコラボレーションの機会も創出できればいいなと思います。
イラストを描く必要性を感じながらも、イラストの上手な描き方がわからなくて困っている先生方も多いと聞きます。医師と絵の技術を持っている人をマッチングし、共同でいい作品を作って発表をしてもらえれば、更なる医療理解につながるんじゃないでしょうか。
今まで、メディカルイラストレーションと言えばあそこに行けば見られる、というような場所がなかったので、このギャラリーがハブになればいいですね。
※本記事は、2024年12月12日時点の情報です
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