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2024年度調剤報酬改定 調剤基本料のポイントをわかりやすく解説

2024年度の診療報酬改定は、薬価の改定が4月、調剤報酬を含む診療報酬の改定が従来より後ろ倒しとなり、6月より施行となります。
2024年1月26日の中医協総会で短冊と呼ばれる診療報酬改定の概要が発表されました。さらに、2月14日に答申された改定案で具体的となった要件・点数の変更点から調剤基本料、調剤報酬改定のポイントについて詳しく・わかりやすく解説していきます。

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改定のスケジュール

調剤報酬について今後の改定スケジュールは以下です。

従来は4月1日施行でしたが、調剤報酬の改定項目については6月1日施行となります。
※薬価については4月1日施行

2024年度調剤報酬改定の基本方針整理

まず、2024年度調剤報酬改定を読み解くために必要な基本方針について「骨太方針」、「診療報酬改定の基本方針」の2つより整理していきます。

2023年6月「骨太方針」

2023年6月に発表された「経済財政運営と改革の基本方針2023」、いわゆる「⾻太⽅針」で政府としての重点課題「持続可能な社会保障制度の構築」についての記載があり、それが今回の改定方針につながります。

【骨太方針における診療報酬改定に係る2つの重点課題】
1.「少⼦⾼齢化・⼈⼝減少」に伴う医療の担い⼿の減少を⾒据えた、「選択と集中」による⽣産性向上
2.生産性向上のための⼈材確保、働き⽅改⾰の他、「デジタル化への対応」

令和6年度診療報酬改定の基本方針

また、2023年10月に発表された「令和6年度診療報酬改定の基本方針」においても、生産年齢人口の減少や生産性向上についての記述が見られ、具体的な4つの方向性が示されました。

  1. 医療の担い⼿の減少に向けた⼈材確保や働き⽅改⾰

    1. 賃上げについて問われている

  2. ポスト2025を⾒据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進

    1. 薬局において関連性が高い項目、「連携」という言葉が多数見られるため、薬局としての機能拡充はもちろんのこと、今まで以上に具体的な連携が求められる

  3. 安心・安全で質の⾼い医療の推進

    1. 少子高齢化が進行する中で、医療提供資源が限られてくるため、専門性を活かした選択と集中により生産性向上が求められる

  4. 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

    1. 薬局に関連したところでいうと、後発医薬品の使用推進や、エビデンスに基づく医薬品の適正使用に向けた取り組み

    2. 薬剤師単独ではなく、医師、その他の多職種の連携・協働による最適な医療推進の必要性

【個別改定項目についての解説】

調剤報酬改定率

12月20日に中医協より発表された改定率については、診療報酬全体については前回改定の2倍、0.88%、調剤報酬についても同様に0.16%のプラス改定になりました。
薬価については1.00%のマイナスと、調剤報酬全体ではマイナスとなりましたが、生産年齢人口減少による、医療の担い手確保・維持に向けての改定と言えます。

改定率について詳しく知りたい方はこちら▼

調剤基本料

調剤基本料に関しては、ほとんどの項目において改定前より3点増加しています。
また、今回変わったのは、調剤基本料2と特別調剤基本料A・Bの要件となり、次項でそれぞれについて詳しく解説していきます。

2024年度調剤報酬改定

調剤基本料2

今回の改定では、対象となる薬局の対象範囲が見直されました。
ひと月における処⽅箋の受付回数が4,000回を超え、かつ処⽅箋受付回数が多い上位3つの保険医療機関に係る処⽅箋による調剤の割合の合計が7割を超える薬局に対し、新たに調剤基本料2が適用となります。
近隣に医療機関が集中していることで、特定の医療機関からの処方箋が集中している、いわゆる医療モールと同様の環境である薬局について見直しが入ることになりました。

特別調剤基本料A/B

医療機関の同一敷地内にある調剤薬局に係る項目、特別調剤基本料は今回からA・Bの2区分となります。
5割以上の処方箋を同一敷地内の医療機関から受け付けている薬局(いわゆる敷地内薬局)は特別調剤基本料Aの要件となり、そのうち届出を提出していない薬局については特別調剤基本料Bが適用となりました。

さらに、特別調剤基本料Bが適用となる薬局においては、調剤基本料や薬学管理料の諸加算の算定を不可とするという厳しい要件になっています。

特別調剤基本料‐使用薬材料

特別調剤基本料を算定している薬局においては、多剤調剤時に薬材料が減額されることになりました。
7種類以上の多剤の調剤を行った場合、算定が1割減となります。
こちらは、医療経済実態調査に基づくもので収益率の状況から評価が見直されました。

医療DX推進体制整備加算

国の医療DX推進に伴い、オンライン資格確認や電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスなどを整備している薬局には加点するという要件が追加されました。
点数は月1回ではありますが、4点となります。

設備体制を整えるだけではなく、実績要件としてマイナンバーカードの利用実績、その他、薬局内での掲示やウェブサイトへの掲載(ホームページ等を有しない保険薬局は除外)など利用者への周知が求められています。
この体制については、6月1日ではなく経過措置が取られていますので以下をご覧ください。

医療DX推進体制整備加算詳細

2024年度調剤報酬改定 医療DX推進体制整備加算

【追記】マイナンバーカードの利用実績について
一定以上の実績要件が求められますが、2024年10月以降に対象となるためまだ要件は定まっていません。
現状の利用率(常時携帯約40%、医療機関での利用率のボリュームゾーンは3%未満)を引き上げる目的から、常時携帯者には確実に利用してもらうという基準もありえるとメドピアでは考えています。
いずれにしても、医療現場側での強力な利用勧奨が重要となります。

連携強化加算

従来、地域支援体制項目に対しての加算でしたが、今回から調剤基本料への加算となり、要件も厳しくなっています。
新興感染症発⽣・まん延時に対応する体制整備の観点から、2024年4月1日より施行される「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」において協定指定医療機関が新設されます。
それに伴い今回の加算要件は、第⼆種協定指定医療機関の指定が施設基準として設けられ、都道府県知事への届出ほか、オンライン服薬指導などの構築が必要になってきます。
また、経過措置として、2024年3月31日までに現行の要件を満たす薬局は、12月31日までに限り加算対象となることが発表されました。
「第⼆種協定指定医療機関の指定」については都道府県知事の承認が必要となりますので、詳細は薬局所在地のホームページ等をご確認ください。

2024年度調剤報酬改定 連携強化加算

在宅薬学総合体制加算

在宅訪問を⼗分⾏うための体制整備や実績に基づく薬局の評価である「在宅薬学総合体制加算」を新設、従来の在宅患者調剤加算は廃⽌されました。
加算は2区分に分かれ、在宅薬学総合体制加算1が15点、在宅薬学総合体制加算2は50点と非常に大きいものとなります。
在宅薬学総合体制加算1については、在宅ができる届出など、従来の在宅患者調剤加算と近しい要件となっています。
在宅薬学総合体制加算2については、在宅薬学総合体制加算1の要件を満たすことに加えて、薬局としての設備投資や実績要件、薬剤師の体制など厳しい要件が求められています。

2024年 調剤報酬改定

その他、在宅関連については以下の変更がありました。

2024年度調剤報酬改定 在宅薬学総合体制加算

地域⽀援体制加算

地域におけるかかりつけ機能の発揮として患者のための薬局ビジョンに記載された2025年に向けての最後の改定になります。
「かかりつけ」や「連携」など基本方針に組み込まれた文言が強く反映されています。
区分は従来通り4つ、点数は前回より7点ずつ減点となりますが、調剤基本料の兼ね合いで調整されたものです。
実績要件と体制要件にわけて説明します。

【実績要件】
区分についての変更はありませんが、医療的ケア児の服薬指導に係る小児特定加算が追加され10項目となりました。
また、実績要件で大きく変わったのは、地域支援体制加算「1」です。
前回改定までは実績項目についての適用要件から除外されていましたが、今回よりかかりつけ薬剤師指導料等を必須とする3つ以上の項目を満たすことが必要となりました。
また、これまで実績要件の内、在宅※個人宅が必須となっていましたが、地域支援体制加算「1」では、必須ではなくなりました。
しかし、次の体制要件において在宅実績が加えられているので、引き続き必須と認識してください。

調剤報酬改定 2024年

【追記】直近1年間の処方箋受付回数1万回の計算方法

【体制要件】
新設、変更となる項目については、資料の青字で記載した通りです。
今回改定で注視すべき点は、調剤報酬改定の基となる「健康保険法」で規定されるもの以外の「薬機法」や「健康増進法」なども組み込まれたということです。

調剤報酬改定 2024年度

個別の項目について重要な点は以下となります。
・18番「要指導医薬品、⼀般⽤医薬品の販売、記録に基づく適切な医療の提供体制(健康サポート薬局要件の48薬効群を取り扱うこと)」
これまで、「一般用医薬品の販売と相談体制」に関して組み込まれていましたが、体制を整えることに加えて薬機法に関わる健康サポート薬局要件が組み込まれています。
・20番「緊急避妊薬の備蓄と調剤体制」
オンライン診療にかかる緊急避妊薬の販売は研修が必要となりますが、それ以外の場合は研修が不要となります。
・21番「敷地内禁煙(保有または借⽤部分)、たばこ及び喫煙器具の販売をしていないこと」
健康増進法で薬局は第一種施設に定められていることから、今回要件に加えられました。

後発医薬品調剤体制加算

今回改定では変更はありません。
特別調剤基本料Aの対象薬局は1/10、特別調剤基本料Bにおいては算定不可となります。

さらに調剤報酬改定についての詳細を知りたい方は

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解説者のプロフィール

■小川 拓哉
メドピア株式会社 プライマリケアPF事業部 薬剤師

「kakari」の企画/開発を担い、現在は営業活動を通じて薬局の支援に邁進している。行政情報を中心とした「kakariセミナー」の講師として、最新の情報の発信も担当。薬剤師としては、管理薬剤師、在宅医療、薬薬連携構築の他、エリアマネージャーや管理部門など幅広い経験を有している。また薬局における保険指導薬剤師を担うなど、薬剤師として知見を活かした活動も継続している。

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