現役産業医が解説|産業医の重要性と産業保健活動のポイント
生産年齢人口の減少から従業員が健康的に働けるよう取り組む健康経営の盛り上がりとともに産業保健活動にも注目が集まっています。
産業保健活動は、企業で働く労働者が安全で健康的に働けるように職場環境づくりや健康保持増進を行う活動です。
産業保健活動の取り組みにあたっては、産業医が非常に重要な役割を担っています。
そこで、今回は産業保健活動のポイントや産業医の役割について解説します。
人生における「健康管理」とは
人は一生のうちに、様々な保健制度・医療との関わりがあり、それぞれのステージにおいて主に関わる医師や制度が異なってきます。
【人生の各ステージにおける保健制度】
母子保健:産婦人科医
学校保健:小児科医・学校医
成人保健:産業医(臨床医)
老人保健:臨床医(開業医)
例えば、妊娠前~小学校入学前には母子保健があり、産婦人科医や小児科医が携わります。小学校に入ると、小児科医や学校医が携わり学校の健診などで健康管理をすることになります。また、いわゆる病気が増えてくる年代になってくると老人保健として臨床医に診察をしてもらう機会が増加します。
さらに、学校保健と老人保健の間に概ね健康で病院にはかからないが、健康管理が必要という期間がいわゆる「成人保健」といわれます。日本においては、成人保健は、健康診断など企業で行われているものが主になり、その中核を担っているのが産業医です。
産業医の3つの業務
産業医の仕事として、以下の3つが挙げられます。
体の健康
心の健康
企業の安全
産業医の業務に関してイメージしやすいのは、1.体の健康と2.心の健康です。健康診断の実施やストレスチェック、休復職面談を通じて、従業員の体と心の健康を守るためのさまざまな活動に携わります。直接、企業で働く人々の健康をサポートするための活動です。
これに加え、3.企業の安全を守ることも重要な仕事の一つです。
企業が安全に働ける環境を従業員に提供することは、健康を守ることにつながります。従業員一人ひとりが病気になる前に予防措置を講じるのはもちろん、事故や病気が発生しないようにするための安全管理も産業医の仕事です。
産業保健を担う登場人物としては、産業医の他にも衛生管理者と安全管理者が存在し、その方々と連携しながら安全管理も担っています。職場巡視、衛生委員会の開催、必要に応じた感染症対策の実施などを通じて、働きながら病気になったり、仕事が原因で健康が悪化することを予防します。
産業医は従業員が健康的に働き続けられるよう、包括的な安全と健康の管理を行う専門職であると理解していただけると良いでしょう。
産業医の役割とは?臨床医との違いも解説
産業医は、医師免許に加え、講習を受けて取得する産業医資格が必要です。
また、臨床医との役割の違いとして、一般的に勤務医や開業医が病気になった患者さんの診療・治療を行うのに対し、職場の安全や健康管理いわゆる予防を行う点が違っています。
具体的に、企業内の制度や健康診断の管理、従業員を働かせるべきかどうかの判断、必要に応じて働き方に制限を加えるかの検討などを行います。
産業医は企業の人事や経営者、社会保険労務士などといった士業を営む方々と協力して、従業員の健康管理と職場環境の改善を図っています。
産業保健活動の重要なポイント
産業保健活動において大事なことは「仕事によって従業員の健康を悪化させない」ことです。
具体的な例として、アスベストを扱う作業が挙げられます。現在でも建築物の解体作業などでアスベストを吸い込むことがあり、これが原因で病気になるリスクがあります。したがって、このようなリスクを予防するための環境を整えていくことは極めて重要です。これを「安全配慮義務」と呼び、企業が従業員に対して安全な労働環境を提供し、健康を守るために行うべき活動を指します。
そのために産業医は、プロフェッショナルとして企業の人事や経営者(組織)への情報提供や指導、助言を行う役割を担います。中立的な立場から従業員と企業双方に対し、さまざまな意見を提供することが産業医の産業保健活動の重要なポイントです。
企業で異なる産業医選任義務
労働安全衛生法に基づく「産業医の選任義務」は、常時50人以上の労働者を雇用する企業に適用されますが、49人以下の企業には義務化されていません。
また、産業医には主に2つのタイプがあります。1つは嘱託の産業医で、月に1回や週に1回などの訪問を通じて、限られた時間内で活動を行うタイプです。もう1つは、労働者数が1,000人を超えるような企業で常勤として勤務する専属産業医です。
企業の規模や業種によって産業医の選任義務や役割は異なり、大企業では複数の産業医が配置されていることもあります。
選任義務について詳しくはこちらから
企業における産業保健活動はオーダーメイドが不可欠!
企業ごとにさまざまな課題があるのは当然のことです。患者さんが人それぞれ異なる悩み、症状、病気を持つように、産業保健活動も各企業の特性に合わせて柔軟に対応する必要があります。たとえ同じ業種、同じ規模の企業であっても、人事や経営者の方針、従業員の傾向などによって必要とされる産業保健活動はまったく異なる場合が多くあります。
このように、産業保健はまさにオーダーメイドが求められる分野といえます。
株式会社Mediplatのクラウド型健康管理サービス「first call」では、各企業の独自のニーズに応じて、最適な産業医の選任や産業保健活動のアプローチを提案しています。その企業にとって何が最も効果的かを見極め、相談を受けながら活動を進めていくことを重視しています。
ぜひ、産業保健活動でお悩みの方は、ご相談ください。
解説者:株式会社Mediplat 医療顧問(医師・産業医) 平野翔大
株式会社Mediplat 医療顧問(医師・産業医)
平野 翔大(ひらの しょうだい)
慶應義塾大学医学部卒業後、初期研修・産婦人科専門研修を経て、現在は産業医として全国小売チェーン企業の統括産業医はじめ、上場企業からベンチャー企業まで20社近くを幅広く担当。また大企業へのヘルスケア事業のコンサルティングも行い、働き方改革、女性の健康経営や健康管理など幅広いアドバイス・講演を行う。
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