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病診連携の歴史といまを解説!「やくばと病院予約」が解決する社会課題

メドピアが提供する急性期病院向けのWeb予約申込システム「やくばと病院予約には、病診連携機能が備わっています。
“病診連携”とは何なのか、これまでの歴史的背景とその裏にある社会的な課題、「やくばと病院予約」がこの先どのように社会課題を解決していくのか、メドピア医療機関支援プラットフォーム事業部・都築  巧真さんが解説します。


病診連携とは

日本の医療においては、後述する様々な変遷を経ながら、医療機関の機能分化が国によって推し進められてきました。
病診連携とは、その機能分化の過程で役割が明確化されてきた病院の「専門医」と診療所の「かかりつけ医」との医療連携を指します。

病診連携によって双方が適切に協調して業務を進めることで、包括的で一貫性のある医療を患者に提供することを目指しています。

例えば、診療所で対処できるはずの軽症患者が大病院のリソースをひっ迫する事態を避けることで、重症患者が大病院で診療を受ける余地を確保する、といった取り組みが一例です。また、患者に関する診療情報が適切に共有されることで、検査や投薬の重複回避も期待されています。

医療法の成立と改正の歴史

現在のような病診連携の体制は、ある時点で突如として作られたわけではありません。まずは戦後から現在にかけて、医療法の改正とともに徐々に改善が積み重ねられてきた歴史を見ていきましょう。

【出典】厚生労働白書「我が国の保健医療をめぐる これまでの軌跡

医療法の成立

日本における医療基盤は1948年の医療法成立を契機に徐々に整備され、それに伴い医療機関数が増加していきます。

戦後公布された日本国憲法にて社会保障が規定された流れで、それまでの国民医療法の廃止に伴い、1948年に「医療法」が成立。この法律によって、公的病院の医療水準の確保を図るため病院施設の基準が定められました。
病院(20床以上)と診療所(19床未満)が明確に区分されたのも、医療法によるものです。
この時点では、病診連携について特に規定されてはいませんでした。

1980年代に入ると、老人医療費の無料化によって、医療機関に必要以上に長期間入院するケース、いわゆる「社会的入院」の増加や、富士見産婦人科病院事件(※)を受け、医療の提供体制に疑問が投げかけられるようになりました。

これを受けて第1次医療法改正法案が1985年に成立しました。

※)富士見産婦人科病院事件とは…1980年に埼玉県で発覚した残虐な事件。無資格の理事長が超音波診断装置を操作し、根拠のない病名をでっちあげ多くの女性たちに不必要な手術を行っていたとされている

第1次改正

第1次医療法改正では、病床規制を中心として、医療提供体制が見直されていきます。

まず、医療法人に対する監督の強化と共ともに、「医療計画」によって全国を 355の区画(2次医療圏)に分けたうえで、それぞれの区画での病床数上限を定め、許可制とする内容が盛り込まれました。

【参考:医療圏とは】
1次医療圏=基本的に市町村単位、身近な医療を提供する医療圏
2次医療圏=複数の市町村単位、一般的な医療サービスを提供する医療圏
3次医療圏=都道府県単位(除く北海道)、最先端・高度な技術を提供する特殊な医療を行う医療圏

つまり、複数の市町村を1単位として全国を区分けし、それぞれの区画ごとで病床数を規制したのです。この法改正を機に、量的拡充の時代から、質重視の時代に入ったと言えます。

1990年代に入ると、高齢化が進んだことで、一般的な疾病の傾向に変化がみられるようになりました。
そうなると、看護、介護、機能訓練に重点をおいたケアを必要とする高齢者のために、入院治療を行う医療施設とは別に、必要な医療ケアと日常生活サービスを提供する施設の創設が求められるようになりました。

加えて、医学の進歩に合わせて医療の専門分化が進むとともに、国民の専門医指向が強まり、医療機関の専門分化と役割分担を進める必要性が謳われるようになります。

第2次改正

1990年代以降には、第2次医療法改正が行われ、医療機関の機能分化がさらに進み、患者の視点に立った医療提供体制が整備されていくようになります。

第2次医療法改正では、医療機関の機能分化が制度化
具体的には、高度な医療を行う「特定機能病院」、長期療養を行う「療養型病床群」が創設されました。以降、時代が経つにつれそれぞれの医療機関の機能がさらに明確になっていきます。
ついに患者の視点に立った医療提供体制の整備の時代が到来したと言えます。

1990年代後半に入ると、勢いを増す高齢化に伴い、要介護者が増大し、医療機関の機能分化がますます重要視されるようになりました。

第3次改正

そこで、1997年に第3次医療法改正が行われ、療養型病床群制度の範囲が診療所へ拡大されるとともに、新たに地域医療支援制度病院が創設されました。
これは、かかりつけ医等に対する支援として、紹介患者への医療提供、医療機器の共同利用や開放化、救急医療の提供、地域の医療従事者の研修などを行う病院のことです。地域医療の中心となる施設であり、かかりつけ医等への逆紹介も行います。

このように、それぞれ医療機関に明確な役割・機能を持たせることで、患者の症状や状態に適した医療機関で、適切な医療を受けられる仕組みを作ろうとしたのです。

これ以降、現在に至るまで医療法は計9回改正が行われ、その時代に合わせて、都度医療提供体制の見直しが図られてきました。

連携を支える「地域医療情報連携ネットワーク」

このような医療法の改正、医療機関の役割・機能分化により、医療圏内で「医療施設の機能分化と患者の視点に立った医療提供体制」を下支えるシステムも必要になってきます。
いわゆる「地域医療情報連携ネットワーク」と呼ばれるシステムです。

「地域医療情報連携ネットワーク」とは、患者の同意のもと、医療機関や施設の間で診療情報(患者の基本情報、処⽅せんデータ、検査データ、画像データ等)を電⼦的に共有・閲覧するための仕組みのことです。

地域医療情報連携ネットワークにより、関係医療機関等の間で効率的に患者の診療情報を共有し、連携を強化することで、以下のような課題解決が可能になると言われています。

  • 豊富な情報が得られることによる患者の状態に合った質の⾼い医療の提供

  • ⾼度急性期医療、急性期医療、回復期医療、慢性期医療、在宅医療・介護の連携体制の構築

  • 投薬や検査の重複が避けられることによる患者負担の軽減

【参照】医療情報連携ネットワーク支援ナビ

地域医療情報連携ネットワークは、補助金(地域診療情報連携推進費補助金)の後押しもあったことで2000年頃から開発が進み、2017年まで右肩上がりで増加。全国の医療圏で普及が進みました。

以下は、システムの普及により解決が期待される、紙ベースでの連携で起こりがちな問題の例です。

  • 紙ベースでの連携の場合、FAX送信や電話対応などの作業負荷が高い

  • 紙からの転記作業が発生するため、正確な情報共有が難しい

  • 他院での検査結果を自院の検査結果と、時系列で比較できない

  • FAX送信および印刷された画像が鮮明でないため、検査が重複する

  • 他院の処方状況が把握しにくい

  • 他院から提供される情報の質・量にばらつきがある

  • 患者の診療情報がカルテ上に散在または不足しており、必要な情報の収集に手間がかかる

【引用】デロイト トーマツ「地域医療情報連携ネットワークを取り巻く昨今の状況」

「地域医療情報連携ネットワーク」の課題

大きな期待を背負った地域医療情報連携ネットワークですが、2019年10月に会計検査院から「システムが全く利用されていない、利用が低調なネットワークが存在している」との指摘がされている現状もあります。

補助金を受けて構築されたものの、継続的な運用や利用者拡大の見通しが立たないネットワークが全国に多数存在しているのも事実です。
厚生労働省も今後の対応として、支援対象となるネットワークの最低基準を明確に定め、目標達成のためのフォローアップを実施する旨を発表しています。

【参照】地域医療情報連携ネットワークの現状について(厚生労働省)

このような状態になった要因について、日本医師会総合政策研究機構は報告資料の中で以下の要素を挙げています。(※1)

  • 年間運営費
    年間運営予算の平均額は約1,340 万円となっており、運営予算がない地域が多かったため。

  • 運営主体
    システムを構築しただけで医療機関同士の連携が進むわけではなく、システム稼働後の運用管理や参加医療機関・患者増加のための勧誘活動等が自足的な運営のカギとなるが、行き届いていない場合が多かったため。
    成功事例においては、取組みに対する運営主体の熱意が特に高いと言われており、しっかりとした組織作り、医療機関同士の顔の見える関係性の構築も重要なポイントとなる。

  • 「全国医療情報プラットフォーム」との棲み分け
    国(厚生労働省)が医療DXとして推進する「全国医療情報プラットフォーム(※2)」との棲み分けが明確でなかったため。
    実際に「全国医療情報プラットフォーム」の創設により、行政からの補助金縮小や打ち切り、参加施設の退会、地域医療情報連携ネットワークの終了などの影響を受けた場合があったという。

※1)出典:日本医師会総合政策研究機構
※2)「全国医療情報プラットフォーム」とは…患者の保健・医療・介護情報を医療機関や自治体、医療保険者、介護事業者などで共有できるシステム

病診連携に寄与する「やくばと病院予約」

「やくばと」は“予約”を通じた病院DX支援サービスで、急性期病院向けのWeb予約申込システム「やくばと病院予約」、医療機関起点の薬局予約サービス「やくばと薬局予約」を展開しています。

やくばと病院予約」は主に病院の予約(医療へのアクセス)にフォーカスしたサービスとなっています。

「やくばと病院予約」の一機能である「病診連携」は、診療所から病院への患者紹介をオンライン上で効率的に行うことを目的としています。

「やくばと病院予約」についてはこちらも参照ください。

「やくばと病院予約」が解決する社会課題

前提として、現状の「やくばと病院予約」は地域医療情報連携ネットワークに求められていることを完全に補完する存在ではなく、主に患者紹介・予約にフォーカスしています。

前半でお伝えした病院の機能分化促進の話でいえば、やくばとの病診連携機能によって、病院と診療所の連携をスムーズに行える環境を提供する役割の一端を担えると考えています。

医師の働き方改革(※)」により、勤務医の残業規制やタスクシフトなどが求められています。
やくばと病院予約」で扱う必要項目は最低限に限られており、また電話ではなく任意の時間にWeb上で処理できることで、病診連携における診療所・病院双方の患者紹介・受け入れ業務効率化に寄与できると考えています。
1回あたりの患者紹介にかかる時間の短縮幅はそれほど大きくないかもしれませんが、積み重なると膨大な時間の削減や、業務の効率化につながると期待しています。

また人の手を介する作業を減らすことでヒューマンエラーも予防でき、その点もひいては業務効率化に効いてくると考えています。

患者さんの目線で見ると、24時間365日いつでも病院と日程調整できる点は、大きなメリットです。結果として、病院での診療の機会損失を防ぐことで、早期受診や早期治療が実現し、ひいては将来的な医療費の増大を防ぐ一助となればと考えています。

※)医師の働き方改革についてはこちらも参照ください

開発の背景

「やくばと」は今までお話したようなマクロトレンドから事業への参入を決めたわけではなく、目の前の医療機関や患者さんの“お困りごと”解決を考えるうちに、今のサービスに行きつきました。

当初「やくばと」は薬局予約(薬局への処方せん事前送信)からスタートしましたが、病院での待ち時間や予約の取りづらさに患者さんが多くの課題感を抱えていることを知り、患者さん自身で病院の予約を24時間365時間できる「患者予約」のサービスを新たに開始しました。

そうして調べていくうち、都心部では病院の予約を患者さん自身が取ることも多いですが、それ以外のエリアでは診療所から病院の予約を代わりに取ることが多いということが改めてわかってきました。まさに患者紹介の部分ですね。

さらに、弊社にて診療所(クリニック)の医師を対象に独自調査した結果、患者紹介業務の手間に関する課題が大きいことがわかりました。

同調査などで得られた知見は病診連携機能の開発にも反映。
患者紹介業務をクリニックと患者さん、病院の3者で分担する仕組みを採用することにしました。

診療に必要な専門的な内容は診療所にて入力し、病院との日程調整は患者さん自身が行い、最終的な予約日を病院が決定する、という流れです。
こうした特徴を備えた病診連携機能を「やくばと病院予約」の一機能としてリリースしました。

サービスの特徴

やくばとの特徴としては以下の4つが掲げられます。

こうしたシステムとしての特徴や運営企業としてのノウハウを生かすことで、病院・診療所・患者さんの3者にとって使いやすい病診連携(患者紹介)のシステムを提供できると考えています。

※)「3省2ガイドライン」とは…電子的に医療情報を取り扱う事業者が、適切な情報保護のため準拠すべきとされる指針。厚生労働省によるガイドラインと、経済産業省・総務省によるガイドラインで構成される

最後に

少子高齢化・人口減少時代を迎える歴史的転換期において「全世代型の持続可能な医療提供体制」を構築することが不可欠な要請となっています。

医療機関支援PF事業部は、今後も国策としての医療DXをキャッチアップしながら、プラットフォームを通じて病院・クリニック・薬局、そして患者さんを”つなぐ”ことで、医療従事者様や患者さんの日々の切実なお悩みに寄り添い、解決をご支援することによって、皆さまの”よりどころ”となるサービスを目指して参ります。

■ 解説:医療機関支援PF事業部 事業部長 都築 巧真
都築さんのこれまでの経歴・サービスにかける想いについては、こちらも参照ください。


基幹病院・中核病院向けのWeb予約申込システム「やくばと病院予約」

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